「誰かや何かの様ではない、その人それぞれの感性や個性を尊重し、ありのままの自分自身を愛してあげよう」という思いを込めて付けられたその店名どおり、抜群のセレクトセンスで、unlikeな個性の魅力を放っている。
オーナーでありバイヤーの尾崎有貴さんは、いつ何時でも旅していたいという旅好き。旅は『食事をとることや呼吸をするのと同等。生きていく上で重要な要素』であり、『旅先で大きく息を吸い、旅から戻り大きく息を吐く。 旅先で大きく吸った息を具現化したものが unlike.』という。
“Spring to Mind” By Yuki Osaki
暦の上では春を迎える二月。肌に刺さる風はまだまだ痛いほど冷たい時節。いつの日からか本格的な春を迎える直前に最後にふりかける魔法のスパイスの様なものを探しに暖かい国々へ旅に出かける様になりました。
「何事もライブよ。」
音楽好きの母の口癖は気づいたら私の人生や私の営む小さなお店の指針となっていました。ただお洋服が並ぶお店でもいいのかもしれないけれど、どこかにライブ感、言うなればそのものがやって来た場所の空気や音、作った人の想いも一緒に運び、お店に来て頂いた方々に少しでも感じて頂けたらなと思っています。
2020年2月、私が向かった先は20代前半を過ごした街NY。そこから飛行機で南下し3時間半、向かうはメキシコシティ。NY とメキシコの2月の気温差は約30度。メキシコに降り立った瞬間に凍った体が一気に解凍される様でした。
照りつける太陽、一年を通して温暖な気候の国メキシコ。
訪れたことのある人はわかると思いますが、実際に太陽が近い! 事実、首都の標高は 2000m 以上。人によっては高山病になることもあるそうです。
2015年以来、二度目の再訪となった国メキシコ。二度のメキシコ訪問の中でも鮮烈に記憶に残るのは、色彩と建築物です。
光の魔術師との異名を持つ ”Luis Barragan”(ルイス・バラガン) 日本にもファンが多い建築家。
近年、Louis Vuittonのキャンペーンのロケ地に使用されたり、ブランドのインスピレーション源としても名前 をよく耳にするようになりました。
彼の建築の特徴は何と言っても色。
特に Rosa Mexicana(メキシカンピンク)とも呼ばれるこの色は、メキシコの太陽を浴びて鮮やかに輝くブーゲンビリアの色として現地の人からもこよなく愛される色です。
バラガンの建築は、メキシコの強い太陽の光でしか表現が出来ないと言われ、メキシコ国内でしか見ることが出来ません。
濃い空の青さも設計に組み込んだのでしょう。
乾いた空気、灼熱の太陽。 ビビットなカラーに心も踊ります。この旅ではバラガンの建造物を 6 箇所ほど巡りました。買い付けの合間に美術館やギャラリー、建築物、気になっていたお店を巡り常に何かヒントの様なものを探ります。
カプチン派修道院はメキシコシティの中心部より 1 時間近く車を走らせた住宅街にあります。
一見して外観からは修道院とは分かりません。
バラガンが修道院と聖堂の設計の依頼を受け、費用を自身が負担する代わりに全て任せてもらい約 8 年の歳月をかけて建設されたそうです。敬虔なカトリックとも知られるバラガン。バラガンが光に込めた思いを全て注ぎ込んだと言われる唯一の宗教建築です。
シスターが一対一で一部屋一部屋を丁寧に案内して下さいました。 仄暗い待合室を抜け、重厚な木製の扉をあけると、まるで後光が差す様な金の祭壇が目の前に現れます。
私の祖母と変わらないくらいの年齢と思わしきシスターと二人きりで礼拝堂の椅子に腰をかけ、 静かにただただ光を眺めた時間が記憶に深く残ります。
メキシコは、コロニアル様式の古い建物やモダン建築のホテルも多く、宿巡りがとても楽しい国。 メキシコの色を実際に体感するのであれば、是非メキシコシティの Camino Real Polance (カミノ・レアル・ポランコ) へ。
入り口では Isamu Noguchi による『永遠の動きの噴水』が出迎えてくれます。 鳴門の渦潮のごとく、激しく渦をまく噴水は一見の価値があります。
60年前に建てられたとはとても思えないモダンな内装やインテリア。
NYにもない、日本にもないその土地の色。時に目でとらえることも出来、時に目だけではとらえることが出来ない。 五感をフルに使い肌で感じること。 夢を見ていたかの様な感覚さえする、正にこれを ”Trip” と言うのではないか、と。 非現実的な世界へと誘う旅は、いつも刺激と心に栄養を与えてくれます。
この2年間で世界は大きく変わりました。
今まで年に 2~3 回程行っていた海外での買い付けもメキシコを最後に行けなくなりました。
最後の海外の記憶となったメキシコの旅。その中で様々な場所に足を運びました。メキシコシティ、プエブラ、オアハカ、それぞれの街の空気は異なり、どの街も深く印象に残ります。
メキシコシティでは、バラガンの建造物以外にも一日いても飽きないような文化の集約、ギャラリーと本屋、 様々なショップが併設するとあるビルや、 昼間はカフェとレコードショップ、夜はセントラルアメリカのアングラシーンを牽引するクラブに変貌するクラシックな外観のビルに訪れ、 街中の至る所にあるタコスやフレッシュジューススタンドで手軽に空腹を満たすこともできれば、 ヒップなエリアにはスパイスやハーブ、ライムを効かせた様々なスタイルのフュージョンレストランがオープンし、 若者で活気が溢れていました。
コロナから逃げ帰る様にしてなんとか無事に帰国を果たしたわけですが、 あれからメキシコがどう変貌を遂げたかはわかりません。1980 年にフリツカー賞、2004 年にユネスコの世界遺産に登録されたバラガン邸はきっと世界が守ってくれているので、今も間違いなくそこに存在するはずですが、 私と同じ様にローカルビジネスを営むその他大勢の人々が今どの様な状況を強いられているかと想像すると、楽しかった2年前の思い出だけをここに綴るのも少し違うような気がしました。
強く太陽が降り注ぐ国メキシコ。
世間でいうメキシコの治安の悪さや犯罪を感じさせない、温和で陽気なメキシコの人々は私の心を終始和ませてくれました。
深い影があるからこそ、強く暖かい日向や色彩があるのも事実。 スペイン侵略から長い植民地時代を経て、政治腐敗、数えきれない程の内乱を乗り越えてきた彼らは、きっとこの苦境にも強く立ち向かい乗り越えてくれるはず。
より強固となったメキシコの街を、いつの日か再訪できることを心から楽しみにしています。
unlike.
愛知県名古屋市中区栄3-31-25サンテアビタシオン402
Instagram : @unlike.official
Online Store : https://shop-unlike.com
(3.26 Renewal Open)
お問い合わせ:unlike.402@gmail.com
※ 4.23に10周年を迎える4月は、ショップイベントが開催されます。
【SHOP EVENT】
⑴ 4.9-4.26 : 福岡のガラスウェアブランド”TOUMEI“の展示販売会。
⑵ 10周年当日4.23には、感謝を込めてプレゼントをお配りする予定。
⑶ 4.29-5.2の4日間は、unlike.にゆかりのある方と共に、特別なイベントを開催予定。詳細はショップのIGをぜひご確認ください。