2022-12-12

My Ground : puytoo / 窪山貴美子

puytoo:2022年この秋デビュー。デザイナーは、これまでフリーランスのファッションデザイナーとして活動してきた窪山貴美子。デザイナーが傾倒しているアートから着想したモチーフやオブジェを身に付けたいというコンセプトのウェアブルオブジェクトブランド。現在は主にジュエリーを展開。

My Ground : puytoo / 窪山貴美子

着ることができるオブジェ

好きなアートから着想したモチーフを、実際に身につけたいという想いで誕生したウェアブルオブジェクトブランド・puytoo。長年服作りをしていた窪山さんが、なぜブランドを始めようと思ったのでしょうか。

「今まで洋服のデザインをしてきましたが、自分自身の手でモノ作りが出来ておらず、何かを始めてたいと思ったのが、アクセサリーを作ることでした。私自身の好きなものをストレートに表現していくうちに、自ら発信したいという気持ちが芽生え、ブランドを始めようと思いました。」

彫金を習いに行かれましたよね。

「はい、始めてちょうど3年になります。戴いていた仕事がちょうどひと段落し、時間が空いたので元々興味のあった彫金の学校に通い始めました。洋服作りは関わる人がとても多く、自らデザインしたものがパタンナーさんや縫製工場さんへと渡り、出来上がっていく。それも有り難く、素晴らしいことですが、裁縫が好きだった昔のように、自分で手を動かして、一貫した物作りをしてみたかったんです。彫金は、最初から終わりまで自分で完結できる面白さがあります。」

ブランドを始めるまでは、フリーランスのデザイナーとしての感情や葛藤があったのでしょうか。

「フリーランスは仕事が急に無くなる不安定な立場。そして、自分のブランドではない分、当たり前ですが思い通りになるわけではない、という閉塞感はありました。そのような働き方だけではなく、自分のぺースで自ら発信できる場所があった方がいいとずっと思っていました。でも、自分が始めてもいいのか、欲しい人はいるのだろうか、といったウダウダと考えていた時期が長かったんです。そんな時に、友人のやっているセレクトショップ・Fayeさんから声を掛けてもらったり、周りの友人からも言われることが多かったんです。もう、ここは乗っかってみようと。」

窪山さんに以前にお会いした頃は、ちょうどブランドの名前を考えている頃だったと思います。ピュトーという名前に込めた想いを教えてください。

「シュルレアリスムの代表格、マルセル・デュシャンが若き頃に在籍していた【ピュトー派】から名付けました。デュシャンがシュルレアリスムとして名前が世に知れ渡る前にいたアート集団ということで、そこから何かが生まれる前夜のような、ここがスタートだったんだという、盛り上がる頃の【ひとつ前】というのがいいなと思いました。」

分断化された身体のモチーフ

記念すべきファーストコレクションの “The Split Body”は、身体の一部を切り取ったモチーフですね。

「”The Split Body”とは、庭園美術館で開催されていた『奇想のモード展』での一室のテーマから戴きました。昔から身体のモチーフに惹かれやすいんです。気が付くと、身体の一部を切り取ったアート作品などを集めており、ファーストコレクションはこれだ!と思いました。」

「小学生の時に、図工の授業で作ったハンコも足首でした。四谷シモンやマンレイが好きで、人形の手や目などのモチーフを身につけたいと考えてました。DIC川村美術館で開催されている『マンレイのオブジェ』も行ってきました。」

First Collection / “The Split Body” 

主にシルバー925を使用。

“HAND”pearl brooch「オブジェのような”HAND”モチーフのピンブローチ。フープとバロックパールはひとつひとつ異なる形状です。」

“HAND”hoop pierce 「オブジェのような”HAND”モチーフの片耳用フープピアス。マット仕上げ。」

“HAND”pearl necklace 「クリップのようなチェーンは存在感もあり、どこにでもフックを掛けられるので、長さ調整が自由自在。その日のスタイリングに合わせてチョーカーのようにも。」

美しさとその裏にあるもの

使われているパーツやモチーフは、少し女性の官能的な部分であったり、蘭などの花弁やサンゴや貝のような自然界にあるけど完璧な美しさだけでない、ナチュラルで歪でグロテスクな面も個人的には感じられます。

「確かにそうゆうのに惹かれている部分もあります。グロテスクなものも好きなので、パールや天然石を見るときに、無意識に選んでいるものはあるのかもしれないです。バロックパールはひとつひとつ違うので、魅力的な形を選ぶのはすごく楽しい時間。服作りをしてきたからこそわかる服とのマッチングもあると思うので、洋服との相性のいいアイテムも今後は増やしていきたいです。」

窪山さんといえばの蘭オタク。蘭はどんな出会いがあったのでしょうか。その魅力はどんなところですか。

「以前住んでいた家の大家さんから胡蝶蘭を貰ったことが出会いでした。当時は、胡蝶蘭は銀座のクラブで飾られてるイメージがあって、育てる気は全くありませんでした。何気なく一年育ててみたその年に、花が咲いてくれたんです。その時に少し愛着が湧いて、ちゃんと育ててみようかな、と。その時に、もう少し良い仕立てはないのかと調べていると、今はなき福岡の蘭屋プラセールワークショップの蘭に出会いました。とにかく、仕立てがかっこよくて、東京でもPOPUPをしていたので、徐々に増やしていき今に至ります。

蘭の魅力は、土がなくても育つところ!上品で綺麗に整えられたお祝い物のイメージだった胡蝶蘭の原種を見た時に、野生的に育つ姿がカッコいいなと思いました。蘭は、地球上で最後に生まれた植物と言われているので、木の幹や上などに自生するそうです。水苔や板に着生させて育つので面白い。なるべく現地の姿のように仕立てるのが楽しいです。いつか自生している蘭を見に行きたいです。」

お洋服やアクセサリーに限らず、デザインをする上で日々どんなところにアンテナを張っていますか。

「アートや建築。民族的なものからとてもインスピレーションを受けています。バウハウスを見にデッサウに行った時から、これで何かを作りたいとずっと考えています。淡々と一人で観光できるドイツは性に合っていると思います。ベルリンは、とにかくかっこいい街!アートも街中にいっぱいあって、ギャラリーの規模がとても大きくて見応えがあります。ヨーロッパの他の国とは、また雰囲気が違った感じでした。歴史ある古いレンガの建物の横に、ふとモダンな建物が突然あって、ガラス張りのマンションの窓や建物がプロダクトっぽい。いい意味で調和され、古いもの新しいものが交わっていて、そのコントラストが面白かったです。」

ドイツは、オーガニックスーパーなども多く、道端で売られているジャンクなソーセージも、実はBioのもの。チグハグ感の面白い国だなと。

新しくスタートしたpuytoo。これからどんな作品が生まれて、どのようになっていくか、とても楽しみにしています。

「私の物作りの軸の一つに、シャネルやディオール、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどのアーカイブデザインからも影響を受けている点があります。確立したデザインのディティールを少しずつ変化させ、いつの時代もモダンに再構築している。現代のデザインは、全く何もないゼロの部分から生み出されるものは、あまりないような気がします。アーカイブの素晴らしいデザインをどう自分なりに解釈して、どうやってモダンに落とし込めるか、どのようにして自分らしさを取り入れるかを考えるのが最近は特に楽しいです。

コンセプトやテイストが変化していっても、それに固執せず、変化していくことも楽しみたい。売れるものではなく、自分が作りたいもの、好きなものを作る。それを忘れないで、自分の気が向くままに、力を抜いて進むこともいいと思っています。」

Interviewee & Photo : Kimiko Kuboyama
Interviewer & Artwork :Sonoka Takahashi

Bayuk IGでは、記事に掲載できなかった情報も投稿予定です。また、アートワーク・コラージュオーダー、プレイリスト作成のオーダーも承っております。お気軽にDMかメールにお問い合わせください。
Related Posts