2022-12-12

We ♡ Movies -Vol.1-

ホリデーシーズンで更に高まる年末の映画・ドラマ欲。映画という視点で集まって頂いた4名のゲスト。おすすめの作品紹介と共にそれぞれのお話を伺いました。Vol.1とVol.2、2回に分けてお届けいたします。

We ♡ Movies -Vol.1-

1人目は、森北菜摘さん。デザイン業・企画・製造・卸業と直営店・BRICK&MORTAR等を運営する村上美術株式会社に勤務。プレス業・プロダクトブランドamabroの海外営業・ベビーギフトのセレクトショップGiving Storeのバイヤーとして、多岐に渡りご活躍。

自他ともに認める映画オタクであり、映画にまつわるものを多数コレクション。映画祭・TOKYO FILMeXには、2006年から毎年欠かさず参加しているという。高めの映画熱と大きな映画愛。ゴジラとドラえもんの映画が好きな5歳の男の子の母。

映画のマイルール

「映画館をハシゴをする事もあるため、フットワークを軽く動きたいので、ひとりで観に行きます。最近、鑑賞映画のパンフレットはマストで購入。撮りおろしのインタビューやレビューが掲載されていたり、映画のコンセプト、内容にまつわる凝ったデザインもあって面白いです。」

大島依提亜さんや石井勇一さんがデザインしているものは間違いなし!

DVDやBlu-rayは、本当に心動かされた作品や、特典に惹かれて購入することが多い。(初回生産限定のコレクターズエディション、制作国版ポスター、監督・俳優インタビューなど)

映画モチーフのTシャツ。「見つけるとつい買ってしまいます。」
映画ポスターのコレクション

TOKYO FILMeX

「人間の強さや脆さ、社会の多様性を、言論表現の自由、反骨精神、そして何より映画の豊かさを教えてもらった映画祭。この映画祭がなかったらこんなにもアジア、中東映画に心奪われることもなかったはずです。映画鑑賞後に監督や俳優などが登壇して行われるQ&A、制作秘話が聞けたり、映画祭の楽しみの一つです。」

グラフィックデザイナー・小林一毅氏による映画祭TEE

好んで観る作品のテイスト

「マジョリティではなくマイノリティを真摯に描いた作品。自分の視野を拡げ、想像力を試されるような作品。また、映像からポエジーが溢れ出ている作品に心動かされます。とても疲れる映画を好んで観てしまいます。」

好きな監督の作品はマストで観るそう。

バイブル的存在の映画

隣る人』/刀川和也

出典:『隣る人』公式HP

「児童養護施設『光の子どもの家』で暮らす子ども達と保育士に8年間密着したドキュメンタリー。人と本気で関わる覚悟と無償の愛の尊さを突き付けられた作品です。

今まで漠然と持っていた【孤児院】【養護施設】のイメージをあっさりと覆され、打ちのめされました。当たり前に、無条件にいつも隣にいてくれる人が、当たり前にいない人もいること。そんな状況を客観的に見ることで、人間が生きていく上で大切なものを改めて気付かされました。」

何度でも観ている映画

牯嶺街少年殺人事件』 / エドワード・ヤン

「魅力的な映画は、必ず忘れられない何度でも見返したいシーンが1つ2つあるものだけれど、この映画はまさかのそんなシーンが236分終始続きます。構図と画面上の人物配置、そして光と影。

映画でこそ表現できる素晴らしさがあちらこちらに散りばめられ、内容も青春、恋愛に、愚連隊、家族、そして社会情勢モノと一本で上質な5作品くらい一気に観た感覚になる。映画的喜びが感じられる、何度でも観返してしまう1本です。」

人生の岐路に立った時に観たい映画

『レディバード』/グレタ・ガーウィグ

『フランシス・ハ』/ ノア・バームバック

を二本立て。

「ティーンの葛藤や成長、そして旅立ちまで、友人や母親との関係を生々しくも温かい目線で描く『レディバード』で咽び泣き、『フランシス・ハ』でアラサー女子の【ダメさ ≒ 純粋さ】にシンパシーを感じ、他者からどう見られようとも、自分を信じてまっすぐ生きることに勇気づけられます。」

固定観念にとらわれている時に観たい映画 

わたしはロランス』 / グザヴィエ・ドラン

「グザヴィエ・ドラン(監督)にはじめて出会った作品。衝撃的過ぎて、3日連続劇場で鑑賞しました。トランスジェンダーに対する自分自身の固定観念を一掃、吹っ飛ばされました。レッテルや枠組みではなく、人間の個の尊厳について、画面サイズ(スタンダード)から、映像、音楽、全てが精密に壮大にデザインされた作品。感服。」

ホリデーシーズン、年末年始におすすめの映画

黒猫・白猫』 / エミール・クストリッツァ

1998年製作/130分/フランス・ドイツ・ユーゴスラビア合作
原題:Chat noir, chat blanc
配給:フランス映画社

「ロマ(ジプシー)の人々の奇想天外で人間くさい、そしてブラックジョーク満載な群像劇。劇伴のロマ音楽も最高に楽しくて、思わず踊りだしたくなる映画です。」

実際にその世界に飛び込んでみたい作品

君の名前で僕を呼んで』/ ルカ・グァダニーノ

「80年代の北イタリアの別荘がまず素晴らしい。豪華さの中に知的さ、そしてラフさも感じられ、中でもテラス(庭)での食事にはずっと恋焦がれています。また、歴史的な街並みや80sの衣装も。

そしてなんといっても、ティモシー・シャラメ演じる同性愛者のエミリオを偏見なく寛大にそっと見守る母アネラのようになりたいです。芸術、音楽、文化を愛する理想の母親像です。」

子供に伝えたい映画

「思春期のとまどいや行き詰った時に心の支えになるような作品は、時代の変化とともに価値観も変化してゆくものだと思うので、その時々の年齢や環境にあわせて、それとなく伝えてゆければ良いなと思います。

あとは、歴史的史実に基づくドキュメンタリーや世界で起きている事象についてのドキュメンタリーを観て、世界を知ることや物事を多様な側面から見たり、自身で判断できるようになってほしいと思います。」

韓国や中国のみならず、今勢いのあるアジアのカルチャーシーン。アジアのアートや音楽・映画含むエンタメ、ファッションに関して、センスの良さを感じます。タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、マレーシア、台湾、中でもフィリピンはかなり注目したいところ。

2人目は、自身のルーツであるフィリピンの文化を継承しながら、フィリピンの雑貨やアクセサリーをセレクトするオンラインストア・itutuguを運営。書籍や雑誌などの制作をするフリーランスデザイナーでもある太田明日香さん。フィリピンの魅力と共に、フィリピン映画やドラマをご紹介いただきます。

フィリピンの文化を継承

「フィリピンは、【発展途上国】や【貧しい国】とネガティブなイメージがあると思います。私自身、母がフィリピン人で父が日本人のいわゆるハーフ。そういったフィリピンへのネガティブな印象があるせいで、自分がフィリピンのハーフであることを恥ずかしく思っていた時期がありました。実際、フィリピンをルーツに持つ友人から『自分のアイデンティティに自信を持てない』という話を聞くこともあります。

フィリピンで活動をされているブランドや、フィリピン系アメリカ人でフィリピンの伝統をモチーフにプロダクトを作っているブランドを知る機会があり、フィリピンにも素晴らしいブランドが沢山あることに衝撃を受けました。その時に、誇りに持てるフィリピンの伝統や文化があることが、自分のルーツの自信へと繋がりました。

そのような背景がある中で、フィリピンのカルチャーやフィリピンをルーツに持つ方たちのエンパワーメントに繋がればいいと思いました。そして、フィリピンのブランドやプロダクトを単純に日本に広めたいという想いで、itutuguをスタートしました。」

itutuguとは、タガログ語で受け渡すを意味する “ipapasa”と日本語の“継ぐ”を掛け合わせた造語。

フィリピンのアートシーン

「先日開催された東京アートブックフェアで、フィリピンのリソグラフスタジオ・Bad studentが出展されていたり、NYで過ごすフィリピンルーツの若者たちの記事がウェブメディアに出ていたりと、今フィリピンやフィリピンルーツのカルチャーシーンの波が徐々に大きくなっている気がします。」

フィリピンのアーティストで構成されたitutugu・ Spotify

おすすめのフィリピン映画

『ある理髪師の物語』/ ジュン・ロブレス・ラナ

2013年製作/120分/フィリピン
原題:Mga Kuwentong Barbero
『ある理髪師の物語』

「2014年にフィリピンのトランスジェンダーの方が殺害された事件が原案。フィリピン映画を日本で見る機会がまだあまりないのが残念です。この映画は数年前の第26回東京国際映画祭で上映されたのですが、また日本で上映してほしいです!」

『波が去るとき』/ ラヴ・ディアス

「アジアを代表する監督とも言われているフィリピンの映画監督・ラヴ・ディアス。この監督の作品はどの映画もとても長いことで有名らしく、フィリピンの腐敗した政治批判なども盛り込んだりと、なかなか観るのに体力が必要です。画面に映る町は、本当に私が知っているフィリピンなのかと感じてしまうくらい、光や画面構成がとても美しいです。フィリピンのお茶の間で人気の俳優、ジョン・ロイド・クルーズが主役で出演されている点もいいなと思いました。」

ホリデーシーズンにおすすめのフィリピン映画

「ホリデーシーズンでクスッと笑えるフィリピン映画を2本選びました。Netflixで観られるフィリピン映画は、ラブコメが多め。フィリピンの雰囲気や人柄などが楽しめると思います!」

『替え玉美女はトラブルの元』

出典:Netflix

『恋に落ちずにいられない』

出典:Netflix

フィリピンの魅力

「フィリピンの人達は、踊るのと歌うのがとにかく大好き。フレンドリーで明るい人柄です。そして、フィリピンは手付かずの美しい自然が多く残っています。」

itutuguで取り扱うキャンドルブランド ・Saan Saanがインスパイアを受けたという町・サガダ

Saan Saanのソイキャンドル。「どの香りもフィリピンに由来したコンセプトで作られており、個人的な記憶や文学の一節、思い出の場所などからインスピレーションを得ています。」

自信を教えてくれるHgelem Nawa

「【Hgelem Nawa】とは、ティボリの言葉で『自分の心の強さを信じなさい』という意味があり、ティボリ族の人々は、困難な状況に陥ったときにこの言葉を口にして、内なる自分を思い起こすそうです。

Sesotunawaは、フィリピンのミンダナオ島南部にあるセブ湖を中心に手工芸、真鍮鋳造、織物、ビーズなどの芸術を作り上げてきたティボリ族の職人たちの持続可能な共同体システムの構築を目的としたブランド。コロナの影響で経済的に苦しい時期があり、多くの職人さんが働き口を探すため、工芸作りから離れてしまった経緯があります。このメディテーションセットを通して、ティボリ族の人々だけでなく、世界中の人々とこの言葉を分かち合いたいという願いがあるそうです。」

コロナパンデミックの初期に作ったベルとお香立てのメディテーションセット

Text & Photo : Natsumi Morikita
Text & Photo : Asuka Ota
Text & Edit & Artwork :Sonoka Takahashi

Bayuk IGでは、記事に掲載できなかった情報も投稿予定です。また、アートワーク・コラージュオーダー、プレイリスト作成のオーダーも承っております。お気軽にDMかメールにお問い合わせください。

Text & Edit & Artwork : Sonoka Takahashi

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