2022-03-18

Branched Music / 津田千穂 (chigo)

昨年の秋に、22周年を迎えたchigo。デザイナー・津田千穂さんは、chigoの軸にある【Music / Faith / Love】は、『自分のスピリットを豊かにしてくれる必要不可欠なエッセンス』であり、そしてそれは『目には見えないもの』と語る。その目に見えないものをクリエイションに反映させ、生み出す作品は、もはや曲やアルバムのよう。

19歳で販売員をしていた頃、先輩達が付けていたStud Blaceletがchigoとの出会い。そしてバンドや音楽を掘り進めるのと同じ勢いでそのブランドを知り、出会ったフレーズは、

「ギターやベースなどの楽器を使わずにジュエリーを通して音楽を表現するロックバンド」

音楽が好きな自分にとっては、バンドを組んだり、楽器を演奏しなくても音楽が表現できるということに衝撃を受けた。それからお祝いやご褒美に、chigoのジュエリーを少しずつ集め、身につけながらロックやアーティストを知っていく青春時代を送った。付けていると自分に自信をくれたchigoのジュエリーたち。Stud Blaceletは、永遠に私の名盤。

Branched Music / 津田千穂 (chigo)

chigoと音楽と旅

当時も今も変わらないこと・変化したこと

「chigoでは、自分が生きる上で大切にしているものを、ジュエリーを通して表現し続けています。ジュエリーが自己表現のツールであるという感覚はずっと変わりません。若い頃は目標や憧れを抱き、外の世界を眺め、追いかけていたので、なりたいイメージに少しでも近づきたい一心から、デザインをしていたように思います。年齢を重ねてからは、より自分の内面の世界にフォーカスするようになり、クリエイションにも影響したように感じています。」

Veronica is の後に来る【形容詞】を自由に楽しんでほしい

「自分の変化を自由に楽しむ大人の女性に向けたVeronica is。大人になって知ったことは、若い時には分からなかったことが体感として理解できる反面、自分という人間のことが今だに最も分からないということ。人生は自分を知る旅だと思っていますが、きっと一生かけても分からないものなんだと感じています。そんな私が至ったのは、自分が心地よくいられたり、こうありたいという人間像、女性像というものが人それぞれであり、その時の心情や状況や環境によっても常に移ろい変わるということです。」

クリエイションにとって必要不可欠な音楽

「私にとって音楽は聴くだけで一気に頭が浮遊し、別世界へ連れて行ってくれて、同時に感情も解き放てる、まるで旅の縮小版のようなものです。ロックは音楽のジャンルのひとつというだけでなく、生き方、アティテュードだと思うんです。表現されるのはアーティストの真の叫びや思想であり、その本質に共鳴するからこそロックに魅了され続けているんだと思います。」

洋楽、ロック、パンクを好きになったきっかけ

80年代

「80年代真っ只中、10代の私にとって、洋楽の情報源はビルボードのチャートが全て。アメリカでのヒット曲をとにかくたくさん耳にしていて、ジャンルにはこだわっていなかったですね。そんな中、初めてのロックとの出会いは、Guns and RosesやSkid Rowなどのハードロックやメタルのバンド。私の中で『ロック=かっこいい』という図式が出来上がりました。」

90年代

「90年代に入ってすぐにNirvanaが現れ、グランジのムーヴメントがファッションにも影響したのは、自分の中でロックをより好きになる大きなきっかけでした。この時代、音楽とファッションは密な関係で、自己表現には切り離せないもの。まさに、自分が好む音とファッションが合致したのは、グランジでした。90年代はグランジのようなオルタナティブからブリットポップなど、今でも伝説的なバンドがどんどん出てきて楽しかったですね。それと同時に、好きなバンドがどんなミュージシャンにインスパイアされているのかを掘っていき、グラムロックやハードコアパンクも聴くようになりました。」

2000年代

「そして2000年代初頭のリバイバルロックブーム。The Strokes、The White Stripes、Yeah Yeah Yeahsなど洗練されたかっこいいバンドが続々デビューし、この頃からライブに足繁く通うようになりました。」

初めて好きになったアーティスト : Madonna

「初めて好きになったアーティストは、中学生の時のMadonnaでした。世界にはこんなにも強く、自信を持って我が道を切り開いて進んでいく女性がいるのか、と衝撃を受けたのを覚えています。時に挑発的に、果敢に新しい表現に挑む彼女の姿に、まだ幼かった私はドキドキしながらMVを観ていたように思います。」

MY ICON : Patti Smith

「パンクのゴッドマザーでありながら、音楽だけでない言葉の表現方法を持っている多才なアーティスト。強さと賢さ、温かい寛大さと純粋さ、少女と大人の女性が共存している永遠の憧れのアイコンです。」

今も昔もずっと好きなアルバム :

David Bowie 『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars

「David Bowieは、真のアーティストであり天才。アルバムごとにペルソナを作ったりしながら変化し続ける姿は、音楽とアートとファッションの融合を体現していると思います。メイクやファッションもさることながら、全ての曲が大好きなアルバムです。」

Lou Reed 『Transformer』

「Lou ReedはVelvets時代の曲もそうなのですが、いつ耳にしてもアートそのものに聴こえます。このアルバムにはニューヨークのヒリヒリした都会の空気感を感じさせてくれる音が詰まっていると思います。」

FUGAZI 『Repeater+3songs

「Ian Mckayeの硬派な姿勢で作り出されるギターサウンドを聴くと、自分の中の熱量が増します。特にインストの曲がかっこよくてループして聴きたくなります。」

Radio Head 『OK Computer』

「秀逸なメロディが魅力で、『Let Down』のイントロを聴くだけで涙が出そうになる。悲しい感情に浸りたい時はこれと決めているアルバムです。笑」

BUZZCOCKS 『Singles Going Steady』

「パンクロックの中でも、楽曲作りがとんでもなく優れていて、軽やかでキャッチー。聴いていて元気になれます。」

Ariel Pink’s haunted graffiti 『Before Today』 

「変態的なサウンドの魅力を教えてくれたのは、Ariel Pinkです。聴き込むほどに良くなる、中毒性があるアルバムです。」

最近よく聴く曲 : Prince & The Revolution 『Raspberry Beret』

「その日の気分によっても変わりますが、ここ数日よく聴いているのは 『Raspberry Beret』、曲に合わせて踊りたい気分です。」

好きなMV :

Fat Boy Slim 『Praise You

「この映像の中のSpike Jonzeは最高!それしか言えません。」

Kylie Minogue 『Come Into My World

「Michel Gondryの創り出すどこかファンタジックな映像が大好きです。」

忘れられないライブ :

Iggy Pop / Lou Reed / White Stripes / Mars Volta / Kirin J Callinan

「表現者にとって年齢なんてものは全く関係ないのだと思わせてくれる、溢れんばかりのIggyのエネルギーを感じたフジロックでのステージ。たくさんの観客を上らせてしまったために、もはやカオスと化したステージの上でIggy本人も少し焦っていたように見えて楽しかったです。」

「Lou Reedのライブは、歌っている彼の隣で、なぜか太極拳のマスターが曲に合わせ動いていて、年齢を重ねた彼の世界観の奥深さを感じました。そして、ベースレスとは思えないJackのギターとMegのドラムが絡み合う迫力のあるサウンドに熱狂してしまい、途中の記憶が飛んだWhite Stripesのライブ。Mars Voltaでは、多様な要素を含むプログレの音と、フリーセッションのように演奏される長いインストに酔いしれ、最後は宇宙に行きました。Kirin J Callinanのライブは一言、やばいものを観ました。一生忘れないと思います。」

好きなフレーズ : Jack Whiteのコメント

「White Stripes・Jack Whiteのインタビューで、『優れた曲っていうのは、まだお金も無く小さな部屋にこもってギター1本で時間をかけずに作り出されるような曲だよ。』というような言葉を読んだことがあります。私は、ミュージシャンの1stアルバムというものに、そのアーティストの最も衝動的な純粋さに溢れた表現がされていると感じることが多いので、もの作りをしている立場としても、その言葉にとても共感しました。」

ありのままに戻してくれる旅

「デザイナーという職業柄、インプットできる旅の方が充実感を味わえることが多いため、刺激やインスピレーションを受けそうな都市を選ぶことが多いです。かといって、必ず何か持ち帰らなければ!という期待を膨らませることは少なく、現地で起こるミラクルやハプニングを楽しみにするくらいな気軽な気持ちで旅に出るようにしています。

自分の慣れ親しんでるものや価値観を全てまっさらにしたくなった時に、旅に出たくなります。自分の肩書きなど一切通用せず、言葉もうまく通じず、自分が何者かが分からなくなるくらいの環境の中で過ごすことは、フレッシュでニュートラルな感覚を取り戻すことができます。私にとっての旅の一番の魅力は、そこにありますね。」

忘れられない旅

「仕事で行ったベルリンは、まだ未知な部分は多いですが、奥深い街で惹かれました。華やかさは少ないけれど、直線的な空気感の中にマニアックなカルチャーが隠れている雰囲気は、なんとも魅惑的でした。訪れたRamones Museumにはカフェが併設され、インテリアもすごく可愛くて、ずっとお店にいたかったのを覚えています。」

「そして、思い出深い旅といえば、小学生だった息子と行ったNYへのふたり旅。ブルックリンのホテルにステイし、街中ではタクシーを使わないと決めて、美術館やギャラリーを訪れる【アートの旅】をしました。同じマンハッタンでも、歩いた方がエリアの特色が肌で感じ取れました。幼かった息子にとって、リアルなNYの姿を目にすることができた貴重な経験だったかと。列車に乗って行った郊外の美術館、Dia Beaconは広大で洗練された雰囲気が素晴らしく、また必ず行きたい美術館です。」

誕生日の息子さんが男の子のお友達から貰った「愛しか詰まっていない」手作りケーキ

ジェンダーにおける、まさに今の時代の象徴。

「男性らしさ、女性らしさにとらわれて、自らを苦しめるようなことは、もうしなくて良い時代だと思います。若い世代ほど男女のボーダーは薄れてきていると思いますが、私も含め、まだ無自覚の中に性差別は根強く残っているものかと。フェミニズムは、女性に限定して主張をしているのではなく、男性にとっても優しい社会を目指している。なかなかそこが理解されていないような気がしています。ひとりひとりの意識の変化によって、こうあるべきという社会観念が減っていけばもっと自分自身でいられ、生きやすくなりますよね。」

「私にとってフェミニズムは、関心を持つことで自分自身や人生を深く洞察することができる思想のひとつ。自身の自己受容の助けにもなってくれています。女性は出産という身体が持つ機能のために、身体的においても生き方の選択においても、思い悩む場面が多い。女性同士がもっとオープンになって、悩みや辛さやをシェアできたら、その痛みを和らげることが出来るかもしれません。女性が繋がれる場面がもっと増えたらいいなと個人的に願っています。」

BOOKS

『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』

河出書房

「昨年のPOP UP STOREで、ノベルティとして、エトセトラブックスさんに選書いただいた本の中の1冊。わかりやすく且つシンプルな内容で、フェミニズムが何なのかがスッと入ってくる本だと思います。著書はTED(Technology Entertainment Design )で話されていることをまとめたものなので、素敵な著者の人柄も見ながら聞ける動画もオススメです。」

MOVIE

『軽い男じゃないのよ』

Netflix 2018年

「主人公の男性が、ある日男性と女性の立場が逆転した世界で過ごすことになり、女性として生きる上での大変さを味わうというストーリー。日常の【あるある】を細かく丁寧に映し出していて、すごく良く出来た映画。根深いジェンダーギャップの問題を扱いながらもコメディの要素も入っているので、楽しく観ることができます。」

chigo

1999年にスタート。デザイナーは津田千穂。MUSIC,FAITH,LOVEをコンセプトに強くしなやかな精神性とスタイルを表現し続けるジュエリーブランド。

2017年に、多面的な魅力や豊かな内面の変化を自由に楽しむ女性のための、Veronica isをローンチ。

お問い合わせ : chigo

ORDER EVENT】 chigo / Veronica is :

3/2(wed) – 3/31(thu) @drama H.P.FRANCE 梅田店

5/1(sun) – 5/31(tue) @drama H.P.FRANCE 新宿店

Comment & Photo : Chiho Tsuda
Text & Edit : Sonoka Takahashi
津田さんの行きたい国や好きなMVも伺っておりますので、記事に掲載出来なかった情報も随時更新致します。

Issue4 “Spring To Mind”

Day 2 : Coming Soon…

Issue4は2回に分けてお届け致します。更新の日程は、Bayuk Instagramをご確認ください。

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