Branched Music / 高橋 苑果
幼少期
ごく普通にテレビに出ている様な歌手を聴き、「音楽=J-POP」、「洋楽=マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパー」の思考回路。家族の影響で、中森明菜、吉田拓郎、荒井由美、竹内まりや、ブルーハーツ、SMAPを聴いていました。車の中で『けんかをやめて』を歌っていた記憶があります。
90年代の小室哲哉全盛期。安室ちゃんは、音楽の入り口を広げてくれたお姉さんでした。安室ちゃんのスタイルはブラックミュージックから来ていて、ローリンヒルをよくお手本にしていたんだなと感じます。歌っている時の立ち方やリズムの取り方が本当にそっくり。
エレファントカシマシ、The brilliant green、くるり、スーパーカー、UA、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Herなど、TVの音楽番組やCMで流れている音楽が良質で、いい時代だったなと思います。
10代
ハイロウズやミッシェルガンエレファントを聴き、そのアーティストが好きなバンドを漁っていた時に、UKロックに辿り着きます。音楽で胸がドキドキして高揚するのは、初めてでした。ザ・クラッシュやダムド、オアシス、リバティーンズ。
ヤーヤーヤーズ、テレヴィジョンやストロークスのNYバンドを聴き、実際にライブやフェスに行くようになりました。ヤーヤーヤーズのカレンOは憧れの女性でした。なぜか初めて手に取ったのはファーストアルバムでもなく、ジャケ買いしたジャパン・エディションアルバム。サブスクにも入っていないので、たまに聴きたくなります。
20代
ロンドンナイト。金曜日の夜に朝まで遊んで、寝ずに学校や仕事に向かうなんて常(威張るな)。フジロックでは新しい音楽を、ロンナイでは昔の音楽を。ここでロカビリーやスカ、スクーターズのような昔の歌謡曲やオールディーズやジャジーなものが好きに。当時はSNSもYOUTUBEももちろんないので、DJがかけた曲を翌日のHPをチェックしメモ。仕事後に渋谷のタワレコで試聴する。試聴機の順番待ちや取り合い。当日出た新曲を聴くのも一苦労。音楽一色の青春時代でした。
30代
辛い時期を過ごした30代で音楽の価値観も変わり、幅が広がりました。JAZZやピアノやバイオリンの美しい音、韓国やアメリカのPOPな曲も聴けるように。どメジャーだろうが、アングラだろうが、自分の好きに引っ掛かるものを大事にしたい。ポピュラーであっても、ピアノやアコースティックギターだけで弾き語れるようなクラシックな才能を持っているアーティストが好きです。
好きなアルバム
The Bends / Radiohead
「学生時代に聴いていました。年齢を重ねた今はOK Computerも好きです。いつも気分や季節によって好きなアルバムが変わってくるのがレディオヘッド。ファーストアルバムから”Amnesiac”までを行ったり来たりしています。本当に色褪せない。」
Combat Rock / The Clash
「クラッシュも名盤が沢山あって選べないのですが、コンバットロックが今の自分に合ってると思います。Bayukという名前は、ジョー・ストラマーの曲からヒントをもらっているくらい、人としても尊敬しています。」
sigur rós / Takk…
「雨の日が続いたり、肌寒くなると、シガーロスやビョークなどアイスランドのアーティストが聴きたくなります。でも実は、緑と太陽の匂いが混ざった夏の蒸し暑い時期にも似合う。”Hoppipolla”はイントロがもう美しすぎる。最近はイントロやギターソロを飛ばして聴く人が多いって本当ですか。」
Nina Simone / I Put A Spell On You
「全ての怒りの魂を音楽へ昇華し、他のアルバムよりも狂気や強さの中に優しさが感じられる一枚。その後、孤独になるニーナのことを考えるだけで泣ける。栄光と転落と復活を象徴するアーティスト。ニーナはピアノに救われ、結局人は、苦しみの中で這い上がるには、好きなことや自分の武器に助けられるのだなと感じる。曲から入った私は、彼女の紆余曲折な人生を知り、人の一部分だけを見て判断することは、考えがとても足りないことだと思わせてくれた。」
The Lemon Twigs / Go To School
「彼らが出て来た時、私の過去の好きなもの大集合(褒めています)、と思いました。どこか懐かしさもあるけど、二番煎じじゃない。ダダリオ兄弟の楽器のオールマイティさ。そしてバンドマンぽいビジュアルやMVも完璧。」
好きな曲とアートワーク
Fistful Of Love /
Antony and the Johnsons
メロディアスでダークでソウルフルで美しい。なんでもそうですが、美しさに影や闇の部分はなくてはならないものだと思っています。Peter Hujarの写真集が使用された、29歳の若さで白血病で亡くなったCandy Darling がジャケットのアートワーク。とても退廃的で、今にもタバコを吸いに、むくっと起き上がってきそうじゃないですか。この年齢で死を目の前にした感情は【退屈】だったそう。化粧をし、死を待ちながらベッドに横になっている姿は、哀しくも、ただただ美しい。
Candyは、Lou Reedの”Walking On The Wild Side”にも登場しますし、The Velvet under groundの”Candy says”はCandyのこと。その歌には、このような歌詞が。
” I’m gonna watch the blue birds fly over my shoulder. I’m gonna watch them pass me by”
Fistful of Loveが収録されているこのアルバムタイトルは、『I am a bird now』、そしてアルバム最後の曲は”Bird Girl ”です。そしてそしてSt.Vincentが出した”Candy Darling”の歌詞中でも「カゴの中に入れられた鳥」と表現されています。
性転換したCandyの心と身体、死をカゴの中の鳥と表し、そして自分の肩越しに見た青い鳥は、天国に向かっているCandy自身だったのかな、と、あくまでも自分だけの解釈なのですが、日々こんなことを考えています。気持ち悪いですね、でもこうやって一生、考察しているんでしょうね。
忘れられないライブ
oasis、ハイロウズ、Red Hot Chilli Peppers、安室奈美恵、SMAP
『推しは推せる時に推せ』とはまさにそうで、いつメンバーが脱退したり、いつ解散するか分かりません。
特に、ハイロウズのヒロトのかっこよさは、今でも鮮明に覚えていて、坊主にミリタリーシャツ、ほっそーいレザーパンツにブーツ姿に舌を出した顔。『私は黒しか着ない。』という若い時期の謎なポリシーを、ころっと覆されました。あの時のかっこよさは誰も越えられない笑。
森の中で観たRed Hot Chili Peppers。”By the Way”のイントロが鳴った瞬間の、地響きのようなオーディエンスの歓声に圧倒されました。私は外国人の大柄な男性の集団に紛れてしまい、耳元で大盛り上がりの大熱唱。アンソニーの声は私に届かず、あなた達の声しか聞こえませんでした。
これから観たいライブ
韓国アーティスト、ジョン・バティステ、ローリンヒル
海外アーティストの来日が続々と決まっていますね。今までは、バンドばかり追ってきましたが、これからはまた別のシーンを知りたいと思っています。時期が来たら、海外でも観たいです。やっぱり声が出せなのは、観客にとっても、アーティストにとっても虚しすぎる。スポーツ観戦もそうですが、アーティストやアスリートは、その晴れ舞台で声援を浴びてこそ。拍手でなく、応援の気持ちが直接声で届けられる時期が来るといいですね。
マイアイコン
ヤーヤーヤーズ・カレンO、スージーアンドザバンジーズ・スージー、川村かおり、チバユウスケ、キム・テヒョン、キム・ナムジュン。芯があって、感受性が高く、繊細な心と圧倒的な自己表現の力があって、どこか影のあるアーティスティックさが好きです。
BTS
「大きな翼で高いところへ駆け上がるアーティスト」ではなく「深いところまで地に根を張っていけるアーティスト」となるための前向きな一歩、これからもずっと応援しています。チームのために諦めたこと、やりたい音楽やパフォーマンスを一人ひとりが追求するのは楽しみですし、それをグループに持ち帰っていく姿も見たいですが、残りのアーティスト人生だけでなく、プライベートも充実させ、誰にも気を遣わずに、感情を豊かに思うままにいて欲しい。
Bayukで伝えたいこと
昨年の秋からスタートしたBayukも、今回で5回目を迎えました。Issue5は自分の気持ちを疑わず、好きなことを追求している方にお願いしました。私がこのマガジンで伝えたいことは、誰の真似でもない自分らしさです。人に何を思われても、自分の感覚を信じて、追求する姿勢は素敵だと思います。
最近つくづく思うことは、ジョン・レノンもジョー・ストラマーも甲本ヒロトもユーミンもBTSも、表現は違えど伝えてることは、みんな同じだということ。そして音楽はどんな時でも、どんな感情も肯定してくれるのです。
いつも読んで頂いて、有難うございます。
BayukのApple Music / Spotifyにて、Issue5のテーマにちなんだプレイリストを公開しています。いつもよりも日本の曲が入っていたり、懐かしさのある曲が多いので、ぜひ聴いてみてくださいね。