2021-12-16

Culture / 林真理子(Jonnlynx)  

サーフィンやファッション、音楽、アート。カルチャーを背景に感じる方といえば、林真理子さん。今回は「音楽」「アート・本」「自然」の3つの視点でロングインタビューをしています。そしてデザイナーとして、自然の中で遊ぶことから感じる、昨今の環境問題についても。

まずは、音楽のお話。退廃的で切ないメロディアスな曲やクラシックなロックバンド。クリエーションや生活の中で、音楽が占める割合が多いかと思います。音楽を好きになったきっかけは、どのアーティストですか。

「私の音楽の原点は、マイケル・ジャクソンとマドンナです。小学生の頃、マイケルのスリラーのPVが衝撃で釘付けでしたね。マドンナは、8歳上の従姉妹の影響で、初来日をTVで観て衝撃を受け、録画したビデオが擦り切れるまで観ました。アルバムは、1983年の『Madonna』から1989年の『Like a Prayer』までは、その頃ずっと聴いてましたね。」

10年前にマドンナの写真集も見せてもらいましたが、クールでとても素敵でした。きっと当時はセンセーショナルだったんじゃないかと。これはとても興味があるですが、TVに出るようなアーティスト、好きなアイドルはいましたか。今聴く音楽が好きになったのは、どんな流れだったのでしょうか。 

「80年代のサザンオールスターズ、コンプレックスや、普通に光GENJIとかも好きでした。中学生では、ブルーハーツ、ジュンスカイウォーカーズ、ユニコーン、バンドブームを通って、クラブブームへ。6、70年代のダンス・ソウルミュージックやヒップホップを聴いたりしたけど、どれもハマらなかった。10代後半から20代前半でレッチリとレイジを聴き出して、私はロックが好きなんだとしっかりと思うようになりました。ロックステディやレゲエも好きです。」

音楽はもちろん、ファッションやヘアスタイルに影響を受けているのはロックスターでしたよね。永遠に自分のアイコンだなと思うアーティストは誰でしょうか。

「永遠のロックスター・アイドルはいっぱいいます。レッチリのジョン・フルシアンテ、レイジのザック、キッスのメンバー全員、マイケル・ジャクソン、デヴィット・ボウイ、マーク・ボラン、レッドツェッペリンのロバート・プラント。この人たちは音楽もそうだけど、ビジュアルも憧れる。」

以前、ロックスターはライブで観ておきたいと話されていたかと思います。これからライブで絶対に観たいアーティストはいますか。

「1番観たいのは、トムウェイツ。あとはビョーク、ニールヤング。」

好きなアルバムを教えてください。

「この6枚は天才アルバム。」

●John Frusciante / Niandra Lades and Usually Just a T-Shirt

「ジョンの初ソロアルバム。とても切なくて、痛みがヒシヒシと伝わってくるアルバムです。」

Lou Reed / The Blue Mask

「30代後半から40代前半にかけて聴いていた、ロバート・クワインらとリハなしで一発録りされたアルバム。ルー・リードのアルバムは、勿体ぶって、一枚一枚丁寧に聴き込んでいます。『Heavenly Arms』と『Waves of Fear』が好きで、ギターがエモーショナルすぎて、沁みすぎる。ロバート・クワインも亡くなっていますが、彼の人生を思うと尚更です。」 

● The Beach Boys / Friends

「20代の冬、特に聴いていました。」

David Bowie / Honky Dory

「デビットボウイの作品は全て聴いたわけでないのですが、メロディがとても気持ち良い、捨て曲なしのアルバム。クラシックやジャズ、その他の音楽の基礎があるからか奥行きを感じます。」

●Tom Waits / Closing Time 

「他にも好きなアルバムあるのですが、好きになったきっかけがこのアルバム、名曲だらけ。」

●Jonny Thunders / Hurt Me 

「ジョン・フルシアンテと同じく、ギター1本と弱々しい歌声、優しくも哀しい。聴いていて毎回泣いちゃうアルバム。」

Syd Barrett / The Madcap Laughs

「魔術っぽさやサイケの中に暗さもあって、このアルバムは何度も聴きました。」

痛みや切なさが林さんの聴く音楽のキーなんですね。Lou Reedは本も読んだそうですが、歌詞もそうで、アーティストがどんな思いで、アルバムに昇華出来るようになったのか、その背景や経緯も知りたくなってしまいますよね。

今はいつでもYoutubeで何でも観れる時代ですが、何度も観ていたい好きなMVはありますか。

「デビットボウイのLife on Mars。アイスブルーのスーツ、左右の違う瞳、メイク、スタイリング、シンプルな構図。ただ立って歌っているだけなのに、かっこいい。」

では、ここからは音楽以外にも、アートや本について。お母様も絵の個展をされていたり、デザイナーを務めるJonnlynxでは、描いた抽象画でオリジナルの生地を作っていましたね。最近の作品作り、お絵描きはしていますか。

「絵を描くのは、最近はデザイン画くらい。ネコのキャラクターでLINEスタンプをしれっと作りました笑。陶芸は20年ぶりにやりましたが、やはり楽しい。時間を忘れて没頭できるのは、絵でも陶芸でも、心が落ち着きます。」

おうちの中には、アートも多数。心地よさそうなベッドルームに飾られていた作品について教えてください。 

「ベッドルームに額装してあるのはSam Haskinsの70年代のHaskins postersという作品の一部です。」

海外の美術館にも多く行かれていて、数年前、別ブランドのディレクションでは、一緒にNYのアートの旅へ。NYの美術館やギャラリーに沢山観に行きましたね。どの展示が印象的でしたか。 

「SOHOにあるNew Museum、そこで見たLynette Yiadom Boakyeはかなり衝撃を受けました。油絵という古典的な表現なのですが、色や構図全てモダンでした。この人の絵は、いつか欲しい。Dia:BeaconでみたBlinky Palermoも面白かったです。これは帰国後、そのブランドで、クリエーションのテーマとして使いました。」

Lynette Yiadom Boakye
Blinky Palermo
NY / Storm Kiing Art Center

海外へ行くフライト中は本をよく読むそうですが、どんな本を読むのですか。

「あまり飛行機で眠れないので、フライトの時には離陸前から本を読みます。買う時間もないので、空港の本屋で2冊ほど買います。フライトで眠れない私にとって、読み進めにくい本は死活問題。飛行機で読むものは、スラスラと気楽に読めるものを。最後の海外出張で読んだ本は、明石家さんまの『ジミー』。めちゃくちゃ笑いました。疲れてる時におすすめです。他には、林真理子さん笑、湊かなえさん、荒俣宏さん、中村うさぎさん。出産してから、本を読むことが減ってしまって、最後に読んだのは林真理子の『正妻 慶喜と美賀子』の上下巻だったかな。妊娠中は脳科学の本を3、4冊読みました。」

数年前から雪山・スノーボードに出会った林さん。今季のJonnlynxでは、雪山に使えそうなアイテムがたくさんありますね。雪山からインスパイアされたという、顔を覆い隠せるバラクラバも。すっかりハマってしまった冬の遊び、雪山の魅力はどんなところでしょうか。

「年齢的にも冷えはカラダに良いことではないのと、単純に本当に寒い!という理由から、38歳の時、冬にサーフィンをするのを控え、雪山は40歳から始めました。自然のことはサーフィンを通して知ったつもりでしたが、雪景色の美しさやそびえ立つ静寂な山々の神々しさを前にして、『私はまだまだ知らないことが多い』と心底感動しました。冬は冬らしい遊びをするのが正解。冷えたカラダは温泉で温めて、山側の美味しいご飯を頂く。何よりこの年齢から、サーフィンのようにまた夢中になれる遊びが増えたこと。その喜びと刺激が大きいのです。」

自然を愛する中で得る感動と知恵。最近は星詠みの勉強も始めたとか。

「古代より格式の高い人々は星が及ぼす力に気付いていて、それを使っていたと言われてるので、昔からそういう神秘は興味があります。今も昔もそこは変わらないと思っています。実は、社会的に活躍してる人ほど活用しているんです。そういったところも興味が湧きます。」

そして、サーフィンですよね。サーフィンをされる方の視点から、長年海に入っていると、環境の変化を感じるはずです。ここ数年で目に見えて、肌で感じる変化はありますか。そして個人的に取り組んでいることはありますか。

「よく通っているポイントの海岸が近年の大型台風によって、浸食されて砂浜が無くなってきています。ここ7、8年でかなり進行してます。海水温も高くなってるので、大きい台風が起きやすくなってるのでしょう。」

「できるだけ無農薬野菜や有機野菜、減農薬野菜を買うようにしています。土地を過剰に耕さず、微生物を大切にする農業には、大気中の二酸化炭素を地中に閉じ込め、温暖化を食い止める力がある。これは『Kiss the Ground 』というNetflixの映画を是非観てください。

環境問題に間接的に関係していると思うことでは、ファストファッション。これは相変わらず買いません。買わないというか選択肢になく、存在も忘れてるので困りません。これは昔から私の小さな運動です。」

ファストファッションを買わない運動は、十数年前から実践されていて、Jonnlynxでも生産背景を考えて作られていますよね。服を正当な価格で作る、売る、買う、ということが当たり前だった時代から、ファストファッションが出てきたあの瞬間、ファッションに対する人々の価値観がガラッと変化したのを目の当たりにしました。

安い物が売れる、安く買える、ということは、誰かにしわ寄せがいって、地球の何処かで苦しんでいる人達がいる。安い賃金で劣悪な労働させられている発展途上国の人々や子供達。そして、生地の原料は、自然に還らないものを使い、大量に生産をする。環境や人権の問題、全ては繋がっている。

Jonnlynxでも大人と同じ生地を使って子供服を作っていますよね。着る期間が短いとされる子供服も、きっとファストファッションで購入される方も多いかと思います。子供服についてはどうお考えでしょうか。

「小さな子供達が強制労働させられているかもしれない環境下で作られた子供服を買うことはしたくありません。ヴィンテージを利用したり、短い期間しか着れないからこそ、こだわったブランドからものを買う。サイズアウトしても、将来を考えて取っておいたり、誰かに譲って大切に着て貰い、その誰かがまた別の人に譲るという循環が生まれる。セールで安くなった時に購入しても良いと思うんです。

なんでもそうですが、何を選択して買うかも投票みたいなもので、日々の小さな選択が未来に繋がっていると思っています。高値の無農薬野菜も買う人が増えれば、作る人も増えるという単純な考え。服も同じです。そして【できるだけ】というのを強調しときます笑。でも、温暖化は加速しているというのは、念頭に置いておきたいです。」

Photo&Comment : Mariko Hayashi
Edit&Text : Sonoka Takahashi

Netflix・年末におすすめの作品など、記事に掲載できていない情報も随時更新していきますので、お楽しみに!さらに林真理子さんには、『Gift』の記事にもご出演頂いております。

Related Posts