前回の『旅のおはなし のはじまり』のつづき。
学生時代や20代は興味も沢山あるから、刺激を求めて、シティを選ぶことが多かったけど、少し年齢を重ねてからは、大自然を感じられて、リラックスして解放される場所を好んできた。よく行っていたのは、バリ。とくに街と人と自然のバランスが好き。
インドネシアの島・バリの産業は、観光と農業が主。ここ数年の世界情勢で、私が好きだったショップやレストランは閉店された場所も多く、今でもSNSを見ながら、大変な思いはしていないか、元気でいるかなと思いを馳せる。親切にしてくれたあのショップのお姉さん、毎日タクシーを手配してくれたホテルのお兄さん、レストランで会った双子の子達、頭の上に荷物を乗せながらバランスよく歩くお母さん、「語学を習得しないと生活していけないから。」と母国語以外の日本語と英語とタガログ語を流暢に扱うあの青年の言葉。
ここに挙げるのは、また会いに行こうと思う人がいるレストランやショップ。旅に人の親切は色濃く残り、また会いに行きたいと思わせてくれた人々とその土地に感謝する。
旅のおはなし・バリ
今でも思い出すたびに、鼻の奥に付いて離れないハイブランドのフレグランスの香りが充満したエアポート内、すっかり近未来的な建築に変わった空港の外へ出ると、東南アジア特有の匂いと高い湿度を感じる。積極的なタクシーの客引きを横目に、耳が痛くなるほど連続するクラクション音が聞こえると、「またここに戻ってこれた。」と重いスーツケースを運びながら、歩いていく。
バリへ着くのはきまって夕方。空港からの道のりはもうカオス。バイク社会のバリでは3、4人と当たり前にヘルメットもせず、1つのバイクに跨がっている。子供も慣れたもので、しっかりと親にしがみ付きながら乗るのが彼らの日常だ。信号のたびに停まる車の窓に、裸足の子供達が窓を叩く。我先へとバイクや車がビュンビュンと行き交う交差点。トラックの荷台には、労働を終えたであろう50人程の男性でごった返している光景もまさにバリっぽい。急に近代的な建物が立ち並んでいるかと思えば、あたり一面田んぼだらけ、というのも繰り返し目に入ってくる。
サーファーのメッカであり、急激に都市開発されているチャングーと、お洒落なショップも多い洗練されたスミニャック、クロボカンが滞在するエリア。バリは世界各国からの観光客が多く、特に隣国のオーストラリア人が大半を占めている。このエリアは、オーストラリアのオーナーが経営しているレストラン、カフェ、ホテル、ショップばかりだ。その辺りは道もきれいに舗装されていて、ヴィーガンに対応したレストランや健康志向の高いグローサリーストアも沢山ある。
今までは空港の下の方にある漁師町:ジンバランに滞在することが多かったが、そちらも開発が進んできていて、もう観光地。だったら、上のエリアに行こうと、ここ最近はスミニャックをベースに、都内から箱根くらいの距離にある、ウブド近郊に足を運ぶスタイル。初めて訪れた時のバリに対するイメージとは、随分と変わっていった。その国の変化を目の当たりにできることもまた旅の醍醐味。
Ubud
滞在先から車で約2時間ほど奥地に行くと自然豊かな緑の多いウブド。ライステラスや寺院、観光地が沢山あるのだが、少し行くとゆったり過ごせるホテルも多いので、森の中の大自然で過ごしたい人にはぴったりだ。
pyramids of chii
こうゆうのは経験なので、日本から事前に予約をしていた。サウンドヒーリングメディテーションといってピラミッドに入って音を聴きながらの瞑想。といっても寝ているだけ。一人ずつマットも用意されていて、寝転びながらするので、長いドライブに疲れ、澄んだガラスの音や心地の良い鐘のリズムもあって、あっという間に眠りに誘われてしまった。
瞑想に入る前、ガイダンスを受けるのだが、「寝てしまってもそれはそれで成功。むしろ大成功だよ。リラックスして。」と言っていたので、私の瞑想体験も大成功とする。
終わってから、その経験に感激しながらハグをしている女性達と目が合い、私はニコっと笑いながらその場を後にする。
balibuda
20年続くオーガニックの老舗。レストランには併設オーガニックショップも。ウブド以外にもあるのだが、新鮮な野菜やオーガニック食材、サプリ、オリジナルのクッキーやエナジーボールなどギルティーフリーのスナックなども豊富。蜜蝋ラップや量り売りの洗剤、古紙を再利用した紙バッグを使用したりとその取り組みも早くからされている。
屋台や道端でジャムウを売っているのもよく目にする。ジャムウとは、ハーブや漢方を用いたジャムウが民間薬として伝わっている伝統生薬。薬といっても日常的に飲める、いわゆる栄養ドリンクのようなもの。ローカルは朝一杯のジャムウを飲む習慣があり、作る人によっても味が違うそう。
チャングーに戻ってから伝統的なジャムウ作りを先生に教わった。
植物の根や実、皮、葉などを原料に、代表的には生姜、ウコン、ユーカリや東南アジアでよく採れるタマリンドというフルーツをペーストにしていく。タマリンドは、整腸作用や疲労回復、アンチエイジングや痛み止めや解熱効果も。カリウム、カルシウム、食物繊維、鉄などが豊富。酸味が強いので、料理などの隠し味にも使われている。
ペーストにしたものを濾して、水やお湯で割って飲む。お好みによって蜂蜜やアガペシロップを。
お手軽に飲みたい時には、街のジャムウスタンドで体調を伝えて、自分に合った調合をして貰える。最近は、若者達が利用する、おしゃれなジャムウカフェなんてのも多くなったそう。もっと手っ取り早いのは、スーパーやコンビニなどでも売られている『トラックアンギン』(約30円くらい)。ミントのスースーした清涼感が、花粉時期や頭痛時にホットで飲むと良い。生姜やクローブの効能で、少し風邪っぽいなと思ったら一発で治るかと。
今韓国のコスメが人気だが、バリにもローカルで作られているコスメが沢山あって、価格はびっくりするくらい安いのに、とても質の良いものが買える。数年前から日本でも購入できるヘアオイルは、現地では三分の一以下で手に入る。ジャムウの知識が盛り込まれたキズ跡にもシミにも保湿力も高い万能クリーム、高麗人参を使ったシャンプーも良かった。
東洋医学が生活に根付いているバリは、小さなハーブ専門店も点々とあるので、ゴツコラやモリンガのサプリメント、レモングラスのハーブティーなどを安価で気軽に購入することができる。
そして、とにかく食事が美味しい。おしゃれなレストランもいっぱいあるし、何回も行きたいお店も多いけど、初めてバリに行った時、ローカルが経営する、地元民ばかりのワルン(食堂・小さな売店という意味)のナシゴレンやイカの炒めものが絶品だった。10年以上前のスマホの時だったので、もう写真もないし、どこにあるのか忘れてしまってもう辿り着けない。もう味わえないものは悲しいことでなく、その記憶こそが特別で、もう手に入らないようなそういうものもまた、その土地の魅力を増し、興味へと駆り立てるのだ。
旅のおはなし・バリ 高橋苑果
Seminyak
Hotel Alila Seminyak
とても解放感のあるホテルで、海やプールにも出やすく、フロントから近い部屋を用意してくれた。部屋に入ると、伝えてもいないのに誕生日のお祝いのケーキを用意してくれていた。朝食が美味しくて、もうそれだけで当たりだった。わたしは最終日に、少し体調を崩してしまったのだが、フライトが深夜だったので、チェックアウトの後にホテル側のご厚意で、別の部屋を用意してくれた。ホスピタリティが行き届いていて、ここまでしてくれたことがとても嬉しかった。長年サービスをする側だったが、気持ちの良いサービスを受けてとても温かい気持ちになったことを思い出す。
Changuu
ミニマルで質の良いインテリア雑貨、コスメ、アパレルなどを取り揃えているライフスタイルショップ。バリらしさも残しつつ、オーストリアのブランドで編集されている。現地の価格からは少し高いが、良いものが置いてあるので、日常のアイテムとしてゲットするにも良い。
crate cafe / crate store
近年ではカフェが多くなったチャングーだが、ここが先駆けだそう。以前は小さなカフェだったが、コンクリートとペールピンクのソファがアクセントに、とても広くなったカフェ。目の前は青々とした田んぼがあって、そのコンクリートと緑が違和感でもあり、とても新鮮な印象。
隣には、アパレルやジュエリーを販売するストアもあり、シンプルなスイムウェアも多いので、現地調達するのも旅の楽しみ方の一つ。crate homeというインテリアショップも出来たそう。
近くにはDeusもあってスケートパークも併設されていた。この通りもグローサリーショップやオーガニックコスメが沢山あるので一日中いても楽しめるエリア。
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