Text&Photo: Yuka Kubo
前回からスタートした久保祐加さんによる連載 “Please, Mr. Postman”の第二回目。実はスパイスカレーオタクでもある久保さんに、これから本格的に来る・バテやすい夏を乗り越えるための、スパイスの魅力について、たっぷりと教えて頂きました。
●スパイスカレーの魅力
・五感をフルに刺激:
一皿に様々な食材が使われていて、味、香り、食感、色とりどりな見た目も楽しめ、五感をフルに使って食べれるところ。
・満足感:
一口一口に満足を感じられるところ。アーユルヴェーダで「食事は満足することが大事」といいます。この場合の「満足」は、たくさん食べることではなく、6味(甘味、酸味、辛味、塩味、苦味、渋味) を摂ると満足し、消化にもよいと言われています。
南インド料理は、米飯が主食。たくさんのスパイスを使うのはもちろん、南インドでは、味の種類として、6味(甘、酸、辛、塩、苦、渋)があるとされていて、主食・副菜・アチャールなどが一皿に盛られた定食・ミールスも、そのバランスがよく考えられている。たくさん食べても、消化に軽いところも魅力。
●ケララバワン / 練馬
東京都練馬区豊玉北5−31−4松村ビル
店主のサッシーさんは、南インド・ケララ州のご出身で南インド料理が豊富。
・ベジタブルスープカレー:南インド料理ではないそうですが、サッシーさんが日本人用に、と考えて作られたものだとか。最近は、このスープカレーにはまっていて、体力や消化の力が落ちてる時に食べると、優しく滋養される感じがします。 スープで煮込む前に、ジャガイモにガラムマサラをまぶしてオーブンで蒸してるそうで、このジャガイモがすごく美味しい。
ランチタイムは、スープカレーとインド米のセットですが、スープカレーとレモンライスの組み合わせが、私のおすすめです。
・ドーサビリヤニセット:お米と豆で作るインド風クレープのドーサ。カリカリクレープのようなもの。ジャガイ モなどのスパイス炒めが中に包まれているので、外側のパリパリの食感との違いも楽しい。インドの炊き込みごはん・ビリヤニも一緒に楽しめるセット。
ケララ料理の野菜は、どれも日本では入手が難しいものが多いそうで、ケララバワンでは、埼玉の農園に委託し野菜を作っていただいているそうで野菜も美味しい。どのお料理も美味しく、メニュー選びがいつも悩ましい。 サッシーさんやスタッフのみなさんが、よく話しかけてくれて明るい雰囲気が漂ってるお店です。
●ケララキッチン / 新丸子
神奈川県川崎市中原区丸子通2−682
直近で初めて訪れたケララキッチン。 1品1品も美味しいんですが、全部ごちゃ混ぜにして食べた時の仕上がり感というんでしょうか、美味しさに、うあぁぁぁぁぁ!また来ようと思ったお店です。
・ベジタブルミールス:この日のカレーはビーツとカリフラワーとジャガイモのカレー。 サンバル、ラッサム、オクラとインゲンのスパ イス炒め、バスマティライス、ピクルスなど。
インドで作られている素焼きのオリジナルの器も素敵で、欲しいと思いましたが、器の販売はしてないそう。
●ラケッシュさんのカレー / あきる野
あきる野にある真木テキスタイルさんの竹林カフェ。年に1度、インドの工房長・ラケッシュさんが来日された際に期間限定でオープンされます。今年も、もうすぐかなと楽しみにしています。
手焼きチャパティが香ばしく、素朴で美味。豆のカレー、オクラのサブジ、きゅうりのサラダ、オリジナルチャトニ、パパド。 竹林を眺めながらいただく、空気も気持ちよくってカレーもロケーションも、本当に最高です。
タンドールで焼かれたジャガイモのパラタが、特にツボ。ラケッシュさんのお店に通いたいと思ったら、普段はインドの工房にいるのだと、この時に知りました。
ネパール料理を代表するのものといえば、ダルバート。 ダルは豆のスープ、バートは白飯のこと。それに野菜などのおかずであるタルカリ、漬物的なアチャールなどを盛り合わせた、日本でいう定食にあたるもの。インドやスリランカに比べ、ネパールでは使うスパイスの量がかなり少なく、ニンニクと生姜の使う量が多いのも特徴。ダルスープは、比較的マイルドな風味で薄味。タルカリやアチャールなどのおかずは、しっかりとした味付け、というのが私の印象です。
●オールドネパール / 豪徳寺
東京都世田谷区豪徳寺1−42−11
ダルバート: 私はやっぱりネパール料理が好きなのかもと思ったお店。ニンニクと生姜は、ネパール料理の味の根幹にあると言ってもいいくらい、かなり多めに使うのが特徴だそう。なので、日本人に馴染みやすい味に感じます。カレーというよりネパールのおかずのタルカリやアチャール、サーグが好き。一品一品ほんとにどれも美味しい。
●ヒマラヤ / 池上
東京都大田区池上5−11−9
ネパール出身のヘマさんが作るネパール薬膳料理 。特徴は、油をあまり使わないため、胃に優しいところ。お店で使われるスパイスやハーブの原料は年に数回、直接ネパールに買い付けに行かれてます。お喋り好きでとてもチャーミングなヘマさんと話していると元気が出ます。ご夫婦のホスピタリティの高さもまた行きたくなる理由の一つ。
・カレーセット:通常はライスが付きますが、チベットの揚げパンが食べたいので、いつもライスをチベットパンに替えてもらっています。ほんのり甘く、非加熱の蜂蜜が横に添えられていて、チベットパンとの組み合わせがたまりません。 このはちみつが時々、ヒマラヤの断崖絶壁で採取したハニーハンターの希少価値の高いハチミツだったりすることがあり、その美味しさにびっくりします。そして、ニンニクと生姜、スパイスが効いた薬膳スープのようなヘマさん特製の、ちょっと個性的なダルスープがとてもクセになります。
・チャーハンセット:チャーハンを炒めるオイルは、オリーブオイル・ごま油・バター・ネパールギーの中から選べます。ギーは、アーユルヴェーダでも【オージャス=生命力】を増やす食べ物と言われています。何より美味しいので、私はいつもギーに。スパイス、雑穀、たくさんの野菜をネパールギーで炒めたチャーハン。オージャスを感じます。
ココナツミルクやココナッツファインが多用され、ココナッツはスリランカ料理に欠かせない食材。また、鰹節によく似た魚の乾物・モルジブフィッシュを様々な料理に使われているのも特徴。青唐辛子もよく使われている印象があります。
●スサンタさんのスリランカカレー
伝説のスリランカ料理店「すらさ」のスサンタ・スラセーナさん。 2016年にお店を閉め、スリランカに戻られ、来日の際に期間限定でお店をオープンされていました。今は、佐渡に移住されているそうなので、また食べられる日が来るのではないかと楽しみにしています。
スサンタさんによると、インド料理とは異なり、スリランカではスパイスを油で炒めないんだとか。スサンタさんのお人柄が出ているような滋味深く、優しいスリランカの家庭料理の1皿。
●TENT / 代沢
東京都世田谷区代沢4−28−9
タイタン=「炊いたん」ていう響きが気に入ってメニュー名にしたのだそう。お店の前を通ると、ついつい吸い寄せられます。 なんかクセになるんです、タイタンカレー。
ラム肉のタイタンカレー:和風出汁とスパイスの組み合わせが沁みわたって、クセになる味。スープはサラサラ系。お味噌汁のように毎日飲みたいと思ったカレースープです。 途中でレモンを絞って【味変】もできるもの楽しい。ラム肉も柔らかくて美味。
店主のお兄さんが気さくで、おすすめのカレー屋さんやご飯やさんの情報交換できるもの嬉しい。
◯夏におすすめのスパイスと効能
消化を助けてくれたり、余分な熱を上手く逃がしてくれる夏におすすめのスパイスと効能をご紹介。
・コリアンダー
冷性なので体にこもった熱を取ってくれ、食欲増進、消化促進、抗炎症作用、解毒 作用や血液浄化作用などがあります。 体を冷ます作用があるので、水にコリアンダーシードを入れて一晩置いたコリアン ダー水は、暑い時期や灼熱感のある時におすすめです。
・カルダモン
味覚をよくする、消化力増進、体の熱を取り消化を助けてくれる。疲労や精神的に もストレスを緩和させ、リラックスさせる効果などがあるとされています。
・クローブ 消化力増進、味覚をよくする、健胃剤、殺菌作用、鎮痛作用など効果があります。
・クミン
食欲増進、消化力増進、体力増強、鎮痛作用、解毒作用などがあります。カレー料 理に欠かせない食欲をそそるスパイシーな香りが特徴。
これからの季節は、よりアクティブに楽しいことが多い時期ですが、 夏は太陽の熱によって体力が奪われ、消化力が1年のうちで最も弱る時期でもあります。冷たい飲み物がたまらない季節ですが、冷たいものを取りすぎて、消化の火を消さないようにもご注意。そのためにもスパイスを活用してみてください。
Edit&Artwork: Sonoka Takahashi