2022-06-15

My Ground : 嶋ゞ (しまじま) / 小島直子

My Groundでは、片足をあげて 右でも左でも 前でも後ろでもいい その足を地面につけて 自ら景色を変えて 行動した方をご紹介しています

My Ground :嶋ゞ (しまじま)/ 小島直子 

ここ10年間、プロダクトにまつわるお仕事をされ、プロダクトディレクターとして活躍されてきた小島直子さん。葉山で暮らしながら、和菓子職人として活動し、今月「嶋ゞ(しまじま)」という屋号を新たに構えたばかり。新しい一歩を踏み出した小島さんに、和菓子のこと、好きなもののお話を伺いました。

プロダクトの企画や制作のお仕事をしてきた一方で、和菓子の制作は、未経験。そして独学でのスタートですよね。未知の世界に飛び込んで、やってみようとスタートしたきっかけを教えてください。

「基礎を学ぶ為に、短期間のレッスンに4ヶ月ほど通い、それ以降は独学です。きっかけは、これまでやってきたことだけでは、満足できなくなったことから。学生時代は絵を描いたり、ずっとものづくりをしていたので、その原点に帰りたいという気持ちと手に職をつけたいという気持ちが重なりました。誰かが作ったものを評価したり、集めたりする仕事から【自分自身のもの】を作り出したいという想いが次第に強くなりました。」

なぜ和菓子の道を選んだのでしょうか。

「自分が好きなもの、心を動かされるものを洗い出し、やりたいことの中から共通点を見出す思考の作業を、1年程しました。食や料理、日本の工芸が好きだったこともあり、その中で、和菓子が中心にあることに気付きました。この道を決心する礎となったのは、「日本のものづくり」の素晴らしさです。プロダクトにまつわる仕事をしながら、様々なジャンルの素晴らしい作り手さんたちに出会うたび、感銘を受けました。そんな素晴らしいものづくりの文化が、もし日本になかったら、自分は今ここにいなかったかもしれません。」

落花生餡とバターの最中の『豊壌』、よもぎの浮島と黄身時雨を合わせた『萌春(もえはる)』、パッションフルーツとトンカ豆の和三盆ブランマンジェ『熱烈冷夏』

 小島さんはよく、和菓子の活動と表現されていますが、嶋ゞでは、どんなことを伝えていきたいですか。

「和菓子を通して、日本のものづくりの素晴らしさを伝えていきたいです。私が思う「日本のものづくり」とは、伝統工芸や職人のことだけではなく、日本で何かを形にしていく全ての方々を指しています。古くから伝わるものも、次世代へと繋がる新しいものも、どちらの価値観も大切にしながら和菓子の制作に取り組んでいきたいです。」

日本の美しい四季を感じられる、素材選びからテーマ、デザイン、器、小島さんの和菓子。日本だけでなく、金木犀と台湾茶を使った『浮雲』など、台湾や中華圏のカルチャーも取り入れられているようですね。

「散歩をしている時や旅先から発想が生まれることが多いです。台湾も何度か訪れ、カンフーが好きで習いに行ったほどです。なぜか、中華圏の文化に惹かれています。」

【嶋ゞ・定期便】:完全予約制・受注生産。毎月1回、素材にこだわった、月替わりの2種類の和菓子をお届け。現在は休止中。秋頃を目指し再開予定。

デザインでとても興味深かったのは、平安時代の遊び「貝合わせ」から着想を得たという寒天のお菓子。地元・葉山の海でデザインに使う貝殻を集めて使用しています。小島さんは、定期便という形でも、地元・葉山の方との関わりをとても大事にされているように感じます。

「自分が暮らす場所やそこでの人とのご縁を大切にしていきたいと思っています。和菓子の活動を通して、その土地の素材を使った和菓子をつくったり、定期便などの取り組みを行いながら、地域と多様に関わる人々を増やしていけたらいいなと思っています。」

葉山の海

小島さんのもう一つの【好き】は、鉱物。鉱物との出会いを教えてください。そして、その好きが講じて、鉱物のZINEを出版もされましたね。

「鉱物の出会いは、国内最大の鉱物や化石の展示会・ミネラルショーです。自然のものとは思えない姿形に驚き、一瞬で虜になりました。出版したZINEは、鉱物のことを詳しく書いたものではなく、鉱物の素晴らしさを、私ならではの伝え方で表現しようと試みました。それぞれの鉱物との出会いや思い出など、鉱物の背景にある物語を綴っています。」

伊達冠石
小島さんの鉱物標本

未経験からの和菓子の活動、鉱物の標本制作や出版、行動に起こすことは素晴らしいと思います。小島さんのその原動力はどこから来るものでしょうか。

「夢中になる原動力はいつだってシンプル。好きだから、楽しいからということに加え、特に和菓子では、人に喜んでもらいたいという気持ちが大きいです。逗子・葉山まで来られない方々にも、和菓子をお届けできるよう、オンラインショップのオープン準備を今進めています。そして、ゆくゆくは自分の好きを詰め込んだお店を持ちたい。和菓子と鉱物と様々なものが並ぶ日を夢見ています。」

そして、お母様である小島さん。以前、ご家族と一緒に北欧に行かれてましたよね。スウェーデンのプレスクールの見学をしていましたが、スウェーデンの教育環境に何か感じたことはありましたか。

「プレスクールや公園を観察していると、子供と一緒にいるお父さんがほとんど。母親中心の日本の子育てと大きな差をそこで感じました。学校は大学まで全て無料で、大人になってからも無料で学び直せる環境。人生を何度でもやり直したり、挑戦しやすい環境があることは、生きやすさに繋がると思います。私も未経験から和菓子の世界へ飛び込んだので、本当に羨ましい。」

葉山は「自然も近くに感じられ、のびのびと子育てができる環境」と話してくれましたが、子育てで大切にされていることはどんなことでしょうか。

「自立と尊重。大人が子供の世界に干渉しすぎないこと。子供はありのままでいることが一番です。よく「子供の能力を伸ばす」ということを言いますがそれは逆だと思っています。子供の頃が一番素晴らしいのであって、社会や大人の都合による常識や習慣によって矯正され、その素晴らしさはどんどん失われていってしまうからです。」

息子さんがワークショップで作ったカクテルグラス。20歳になった時に、一緒に乾杯するそう。

「私は子供の頃から大学生になるまで、ずっと絵を描いたり物を作ったりしていましたが、夢中になっていた事に対して、親からは一切干渉も否定もされず、好きなだけをやらせてくれました。そのおかげで、自己肯定感が常にあり、根拠のない自信だけはいつもあったので、自分でやりたいことを見つけ、一人で飛び込んでいくことが出来ました。今もその延長のようなもの。もちろん、好きなことだけでは生活していけないかもしれませんが、好きなことがあれば自分らしく生きられると思います。そして、自分らしく生きる力があれば、どこへ行っても大丈夫だと思うんです。」

【コラボレーション限定商品・販売中】

購入場所:麻布香雅堂 / Online Store

嶋ゞ

葉山を拠点にする、小島直子さんによる「和菓子を通して日本のものづくりの素晴らしさを伝えていく活動」

受け渡し場所は、逗子の花屋「橘」さん。オーダー・お問合せは、嶋ゞIGのDMへご連絡ください。

Comment&Photo: Naoko Kojima
Edit&Text&Artwork: Sonoka Takahashi

Issue5の公開後、Bayukのインスタグラムでは、記事に載せれなかった、それぞれの【好き】も更新していきます。その他、夏らしい企画も更新予定ですので、お楽しみに。初めましての方は是非フォローをお願い致します。
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