うそみたいなコップを作る人、ささまきこさん。数年前、エープリルフールに開催されたイベント・うそみたいな日。ご近所のアートディレクターの方からささまきこさんの住む葉山でイベントをすると誘われたことで誕生したうそみたいなコップ。
「たまたま義理の妹がポーセラーツ(※日本ヴォーグ社が提唱する磁器絵付けの総称。磁器と芸術の掛け合わせた造語)の講師をしていたので、やり方を教えてもらいながら、10個くらい作って出店しました。イベント名がうそみたいな日に出すコップだから、名前もうそみたいなコップでいいかって。そこに来ている方達が私の作るものを面白がってくれて、その時はこんなに続くとは思っていませんでした。そのご縁で色々なイベントに呼ばれて、本当にラッキーガールですよね。うそみたいなコップを面白がってくれるんですけど、私は面白がってくれる人が面白いんです。」
もともとは、個展やコーヒーショップのウィンドウに絵を描くなど、イラストレーターの活動をされていたささまきこさん。うそみたいなコップができて今年で5年目。コップの絵付けは、イラストに比べて、お子さん達が寝ている隙に、20分でも時間が空けば集中でき、早く仕上がるところも良い点だそう。
「娘達を保育園に入れていなかったので、自分の時間がタイト。集中している時に、子供達がふにゃーって起きてしまっても、すぐに切り替えができます。絵を描いたり、作品づくりに気持ちが入り込みすぎると、自分の中でバランスが崩れて、優先順位が変わってしまう。割れ物のガラスだから、子供達が遊んでる時に割ってしまっても許せる。『大丈夫だよ。怪我はなかった?』って言える自分でいたいから、そこまで没頭しすぎなくて、気持ちが入り込みすぎず、本当にちょうどいいんです。
ちょっとした時間で出来て、それを誰かが喜んでくれるのを見て、今まで自分をよく見せて苦労してたことは違ったんだなと感じました。最初はコップに黒い丸をつけて【ホクロ】とかいってふざけてる感じで。(今もやっていること変わらないけど笑。)こんなの良くないっていう人もいるかもしれないけど、『なにこれ。』って言われても、『わかるわかるー。そうだよねー。』って一緒に言えるくらい気が楽。自分にとって楽しみでしかないんです。そして、喜んでもらえることが私も嬉しい。」
力の入りすぎていないデザインがうそみたいなコップの魅力。それらを表現するポーセラーツという技法は、転写紙シートをデザインカッターで好きな形に切り、水につけて陶器やグラスに貼り付け、家庭用の電気釜で焼き付けるというもの。
ささまきこさんのデザインは、力の抜けたクスッと笑ってしまうものから、取引先さんから発注されるテーマで作る音楽や映画などのカルチャーシーンなども。そのデザインソースを聞くと、
「何にも考えていなくて、ただ反応しているだけなんです。小さな頃から見てきて吸収しているものとコップの形、その時のテンションで瞬発力。でも基本的には【誰かのため】がベースになっています。お友達の職業がアパレルだったら、ドレスの絵を描いてみようとか、ここのセレクトショップの方はこんな人達だから、これを作ったら喜んでくれるかなと。テーマがない時は、その時の気候やその時読んでいた本、子供のおもちゃなどの身近にあるもの。これを作ったらかっこよく思われるかな、とかは全然ないんです。あのお店の人に、そこのお客さんに喜んでもらいたい、という想いがあります。扱ってくれるお店さんも売れた方が喜ぶから、その季節のイベントや記念日などを連想させるものを、少しだけエッセンスとして考えています。」
実は、BAYUKZINEのアートワークを参考にし、インタビューで会う日の前夜に作ったというコップをプレゼントしてくれたまきこさん。(その心遣いと温かさに泣き)昔、雑貨屋さんで見ていたマグネットから着想を得て作ってくださった様子。
「それは買わなかったんですけど、好みだったので覚えていて、頭の中の引き出しから取り出すように。好きだと思ったら、頭に残ると思うんです。」
イベントには精力的に参加しているといううそみたいなコップ。中でもワークショップはその楽しさを一緒に共有できる場だと言う。
「私のワークショップでは、素材だけを用意し、デザインのアイディア出しの部分は手伝わないようにしています。大人は最初とても戸惑うんですけど、『得意ではない』とか『出来ない』って言う人が、仕上がりが面白くなることも多くて。その人の内面や潜在的な無意識な部分が垣間見られるので、セラピーの効果もあるのかもしれません。子育てする上で、子供の心理や心の発達、今求めている環境じゃない人の心理などにとても興味があって、それを覗き見ている感じがします。」
中古のガラスやコップ等を使ったリメイクブランド。誰かの不要なもの、量産されたシンプルなガラスのコップそのものに個性を見つけ出し、可愛くお化粧をしたように、ささまきこさんの手にかかると、うそみたいに生まれ変わるコップ達。リサイクルの観点からも、新たに命を吹き込んで、そのものの良さを再発見してあげている。
「ガラスやコップは、飲食店向けのジャンクショップで仕入れたり、友人が使わなくなったコップを持ってきてくれたりと、コップが寄って集まってくるようになりました。リサイクルされ、たまたまですけど、結果いいことにつながっていて、人も喜んでくれる。本当にいいことしかない。」
コップが集まるように、彼女のまわりにも人が集まってくる。ささまきこさんからは、たくさんの人やご友人のお名前が出てきたこともはっきりと覚えている。特に、ある方との出会いに衝撃を受け、気付きがあり、とても楽になったことがあったそう。
「お世話になっているお姉さん的な存在の方です。イラストレーターとして営業をしていた時に、無意識にジャッジされたりしたり、判断されることが多かったんです。この方に会ってから、カッコつけたり、その人の使える人にならなくていい、そのままでいいんだ、と感じました。その人に好かれるために何かをしなくてもいいんだと思わせてくれた方です。お友達が多いとは自分では思ったことはないけど、私は好きな人が多いです。素敵なものが好きで、人の素敵なところを見つけるのが上手いのかもしれない。」
自身のコップの作風を表すのにピッタリな言葉が書かれたTシャツを着て娘さんと現れた彼女は、自然体で明るくて、素敵なものが大好きなのだと感じさせた。カフェまでの道中に見つけた小さな赤いお花を近くまで覗きに行ったり、古民家カフェの細部や素敵なお庭に、手を繋いだ娘さん以上に目を輝かせ、じっくり見ていたのが印象的だった。うそみたいなコップは、受け取る人へシンプルに愛情を込めた彼女の等身大。
「自分も楽で、相手も喜んでくれて、これを見つけられたのはラッキーでしたね。本当に、うそみたいな日のおかげです。」
ささまきこさんの・自分の心を強くしてくれるもの、呪文、おまじない、楽になった言葉
あなたはあなたでそのままで幸せ。私は私でそのままで幸せ。
過干渉になってしまったり、ダメ出ししてしまいそうになった時、嫌われてしまったかもと思った時に、大丈夫、大丈夫とこのおまじないを心の中で言い聞かせています。とても楽になった言葉です。
万事塞翁が馬・バカボンのパパの『これでいいのだ!』
何かあったとき、一見悪いことのように思うけど、結果そのおかげで何かが救われていたり、すごくいいことがあったように思われても、悲劇の始まりだったり。これはすごく意識しています。なにがあっても全てそれでおっけい。囚われて感情的になると、コップへの影響力が大きいので、生活する上で心掛けています。