34歳が終わろうとしている年、自分の身体の中にがんを見つけた。
そして、2024年の5年前に手術をした同じ日に主治医から【完治】と告げてもらえた。「本当に若い時でしたから、よく頑張りましたね。」「いえいえ、先生のおかげです。ありがとうございました。」というドラマのような患者と医師の会話を一通りし、この3月で異動が決まった先生は、「完治まで見届けられてよかった。」と言ってくれた。チーム一丸となってっという言葉をちゃんと体現してくれた本当に温かい病院だった。
お腹にできた5つの傷は、もうどこにあるのかわからないくらいに薄くなった。今は、窓から眺めていた交差点にだって行けるし、お腹を空かせながら憧れの眼差しで見ていた、病院の片隅にポツンとあるカフェへだって、コーヒーを買いに行けるようになった。当時新人だった看護師さんが、今はもう慣れた手つきで仕事をしている様子を見て、5年という月日の長さを感じる。
主治医を100%信頼をしながら、何か少しでも異変があると、まだ残っているのかもしれない私の身体の中にいるがん細胞が暴れ出すのが恐ろしかった。当時、さまざまな本を読んで感じたことは、これはいいとみんな同じことを言っていると思ったら、これはダメだと、時に否定的な意見が出てきたり。患者はどんな情報でも縋りたくなるもので。では、何を信用すべきかは自分の身体。何が正しいとか何が間違った方法とかでなく、自分の身体に取り込んでどんな食べ物が合っているかを探す旅。
私が目から鱗だったのは、『がんが消えて再発しないバランス料理と毎日つづけた食習慣・7年間、夫のがんを消しつづけたシンプルな暮らし』(林・恵子)という本の冒頭。がん細胞が活発な深夜時間、血流が悪い低体温を好み、悪い仲間を増やすがん細胞を、思春期にグレてしまった子みたいだと「がんちゃん」と呼ぶことにした、という林・恵子さんの話。やっつけたい敵であり、怖い存在でしかなかったわたしのがん細胞が、いまは反抗期中だとさ。全ては捉え方次第。この考え方はその後の心に大きく影響した。
棒を振り回して、目の敵にしていたそれを、一度ここへ座って話そうじゃないか、相手の言い分も聞こうじゃないか、一対一でお互いに腹を割って話そう、とそんな気分になった。こちらがビビっっていたら付け込んでくるぞ。とはいえ、すぐに仲間を呼ぶがん細胞を舐めてはいけぬ。そうかそうか、ちゃんと自分で自分の身体に愛情をかけるのだ。
5年間続けたコールドプレスジュース
毎日続けられたのは、美味しいものを飲もうとせず、まずい味を受け入れること。今日はどんな色が出るのか、と毎朝の楽しみ。(ここでは種類少なめの色の良いものをあげていますが、適当に多くの食材を入れ、濁った色のものを飲んでいるのが現実。)
ベースは抗がん作用の高い栄養素を多く含む人参が多く、夏と冬では積極的に旬のものを取り入れ、特に冬は身体が冷えないように材料は気をつけている。もちろん、果物には果糖が含まれるので摂り過ぎ注意。
昨年のブラックフライデーでヒューロムを新調。H-200シリーズ。感覚的に組み立てられるのと、ミキサーのように刃がないのでささっと水洗いできて、ストレスがない。前までは一欠片ずつ、ゆっくり入れなければいけなかったので、タンク型になってまとめて食材を入れられるのがとても楽。
ジュースを自分で作ると、市販のコールドプレスジュースの値段に納得。さらに、緑の葉物野菜などはプレスしてもこれだけしか取れないのか、と思うほど水分が少ないので、市販のコールドプレスジュースは、りんごや柑橘類などがかなり多いのだろうなと感じる。体調に合わせて、自分の好みに出来るのでお勧め。凍らせたバナナやいちごなどに専用のツールを使うと、アイスやシャーベットが作れるので、お子さんのいるご家庭にも。(いつかいつかと思いながらも、やったことはない。アーモンドミルクは以前作ってみたことがあり、とても新鮮だった。)
コールドプレスのお店でおすすめ・新宿のぴーまん、ぜひ。
冬の五臓の腎
東洋医学では、『腎』の働きを助ける食材が多い黒い食べ物を冬に戴くと良いらしい。うなぎ、黒豆、黒胡麻、干し椎茸、黒きくらげ、ごぼう、うに、カツオ。毎日の玄米にプラスして、黒米を混ぜるように。白米に入れると白米特有の粘りがとれ、プチプチした食感になり、卵かけご飯するのが好き。
今は卵も高くなってしまって、Roosterのものはなかなか手が出せなくなってしまったけど、フリーゲージで育てられた卵の美味しさ。『黄身の濃さだけが全てではない』と思えた卵。薄色で上品で、臭みが全く無い。
ぼーっとしているとおかず全て茶色の醤油の味になるので、煮物にしがちな切り干し大根もさっぱり食べられる胡瓜のサラダで工夫。キッチンにいるのがあまり好きでないので、切って和えてのとにかく早く簡単に作れること。(と、あまり常備菜とかしませんの食べきりスタイル。)
免疫力アップとお腹のお掃除
グルカン、ビタミンD豊富なきのこ類。きのこ祭のきのこ鍋。大好物の花びら茸は、ごぼうと手羽中、大麦、ニンニクを塩だけで味付けした参鶏湯風スープに。きのこは消化に時間がかかるのでゆっくり食べ、よく噛むこと。色んな本を読んで健康に良いと共通していたのは、お塩だけで味付けした野菜スープ。最近はキャベツと蕪のスープにハマっている。私の腸のお掃除はキャベツとアボカド。どんな食材が、自分の身体に合っているのか知るのは、とても大切。
外食
アレルギー検査でわかったのは、牛肉・アルコールアレルギー。リスクの高いベーコンやハムなどの加工肉は、外食でも摂らない、野菜と魚、鶏肉中心の食事。外食だってしたいし、してるし、甘いものだってたまには。
伊東市にあったオーガニックカフェ。地産地消にこだわった栄養とボリュームたっぷりの食事。衣もパンも米粉で作られたグルテンフリー。これが本当に理想的な食事だなとまた復活してほしい。都内ではあり得ないお安さ。近所のおばあさまも多く来ていたが、みなさんこの量をペロリ。
小麦は我慢していた時期もあったが、うどんやベーグルやバインミーなども大好きなので、たまに食べるように。食べたいものの我慢はしない。そのかわり、排出することを意識。しかし腸の炎症は目で見えないので、調子に乗らずもたまにレベルにな。スパイスカレーはグルテンフリー、癌予防の王様に君臨するニンニクのカレー。ニンニクは野菜スープにも必ず丸ごと入れる。
お菓子
友人から戴いたアンジャンクフーズプロダクションのショートブレッド
小麦粉、乳製品、白砂糖、添加物、保存料すべて不使用という完璧なお菓子。そんなありがたい存在で、ココナッツの風味とお塩がひき立つ美味しさ。塩が甘みをさらに際立たせ、チョコチップの控えめな甘さがなんとも。一口食べた途端に「うまっ!」と自然に声が漏れたちょっとレベチなお味。タイから帰国した直後に戴いたので、ココナッツの気分もぴったり。添加物もなくヘルシーで美味しいだなんて、もう毎日これがいい、と。何より、私の身体を気遣って選んでくれたところが嬉しかった!
貧血
この5年間の血液検査で、ヘモグロビン数値はずっと低め。生理中のビーツのジュースだけでは、食べ物から鉄分を摂ることは難しい。昔に比べて今は窯も変わり、ひじきもそこまで多く鉄分が摂れないそうで、サプリに頼っています。カナダのブランド Novascotia Organicsは、植物由来のみを使用していて、安心安全なブランド。頭がすっきりして日中の眠気も無くなるので、摂り続けている。実は今年に入って不正出血が続き、貧血中にとても助けられた。飲むとき血生臭さあり〼。
オーガニックコットン
病院で用意された手術着による摩擦で、身体中に湿疹が出てしまった。麻酔が効いているのでお腹の傷よりも、そこが気になる始末。術後は肌が敏感になっているので、柔らかいオーガニックコットンの重要性を特に感じる。以前オーガビッツに感銘を受け、出会ったオーガニックコットン。自分で作ったロンTEEについつい手が伸び、ライブや旅行など体温調節や日焼け対策にとても使える。今はたくさんのオーガニックコットンでの商品が多く、生理ナプキンや吸水ショーツやインナーなども試してみたいと思っている。
術後の不思議体験といえば電磁波。電子機器を触ると腕がビリビリするので、1週間くらいはスマホを触ったり見たりするのが辛かった。癒着に注意とかなり言われるので、日中は身体を動かすよう、尿道の管をすぐ外されたスパルタ体験。院内を歩いたりやっと休憩でベッドに戻ると先生来る。この人ベッドにばっかいるって思われたの何あれ、タイミング。
大腸内視鏡
普段よりも柔らかいトイレットペーパーやタオル。何回手を洗うんだってくらいお手洗いに行くので、泡タイプのハンドソープやお気に入りのハンドクリームを準備。内視鏡を制するには前日の食事。(便秘気味の方は2日前から気を付ける。)種や皮のある野菜や果物、蕎麦、脂っこい食べ物や乳製品は避け、夜の食事は6時までに軽く終わらせる。
S字結腸の曲がりがあり、痛みが強いので内視鏡中は麻酔を。いつも先生がS字に悪戦苦闘している間に、少し目を覚ます。曲がり方は人によって違うので、辛かったら迷わず薬を使ってもらうのが良い。
普段の豆乳ヨーグルトから大腸内視鏡前日の朝ごはんは、頑張るためのご褒美にこれ。年1でしか買えないくらいのお値段だけど、シュワッとした感覚が舌に伝わり、ちゃんと発酵しているのが分かる酸味のあるココナッツヨーグルト。本当に好き。ハチミツとか何もかけずにそのまま。面倒な検査も、こうやって楽しみを作って自分をワクワクさせる、これ大事。
BOOKS
『くもをさがす』西加奈子
コロナ禍、カナダで乳がんを患った西加奈子さんの心情。病に対する姿勢。日本とは異なる医療システム。西さんのユーモアで綴ったエッセイ。読み進めると、このタイトルがスッと入る。
『ヘルタースケルター』川村かおり
アーティストとしての大胆さと繊細さ、母としての強さと弱さ、病気への向き合い方がありのままに描かれた一冊。その後再発が分かり、愛娘が思春期になった時に、母親として伝えたいメッセージを残した『My Sweet Home 君に伝えたいこと』が出版された。
病とは無縁だった20代の自分が、この本を選んで本当に良かった。
韓国の美術館で見た絵画
これを見た時は、よくあるメッセージだよね(失礼)くらいにしか思わなかったけど、長い長いトンネルを歩きながら、明るい出口が見えて、もうそこまで来た、という大きなお山を越えた今の気分にぴったり。登山も下山もしなくていいなら、私は恵まれていたよな。トンネル作ってくれた人ありがとう。(何の話し?)
日本の医療に感謝。医療従事者さまさま尊敬。
Dirty Pretty Things
今日、私は40歳の誕生日と結婚12周年を迎えた。私は今の夫婦二人の人生をとても気に入っている。同世代の知人女性が、もう十分に二人の生活を楽しんだでしょうとでも言うように、耳を疑う言葉を掛けてきたけど、なぜ他人のないものを【足りていない】と不憫に思うのだろう。きっとその人は、家族が増える素晴らしさを伝えたかっただけだと思うけど、人それぞれの人生の選択や決断、事情があり、自分で選んだどんな人生も豊かで、あゝすばらしい日々なのだ。
たくさんの感情を抱えた5年間の、わたしのDirty Pretty Things。あの時、涙で汚していたティッシュは、今はお出掛け前にリップの跡をつける時に使う。誰かのお勧めするリップの色番号じゃなくて、自分に一番似合うお気に入りのカラーを見つけて、私はまたどこかに出掛けるね。
この5年間、私も家族も本当によく頑張った。その内側から湧き出るパワーと愛おしい毎日をこれからも大切に。
2024.03.06 Sonoka Takahashi (Bayuk)
最後に
今、病と闘っているすべての方、そのご家族に希望の光が見つけられますように。数多くの音楽を残してくれたチバユウスケ、ボクシングファンに素晴らしいファイトスタイルを見せてくれた穴口選手のご冥福をお祈りします。この5年間をそばで見守ってくれた家族や友人、治してくれた主治医、通った病院にとても感謝しています。そして、ここで出会った読者の皆様、見つけてくれて読んでくれて、本当に有難うございます。皆様の心と身体の健康をお祈りしております。