2022-12-12

London:Minami Soma

6年前、ワーキングホリデーにて渡英。現在はロンドンを拠点にファッション業界で働くMinami Somaさん。セールスエージェントの会社に勤務し、ブランドとバイヤーの方を繋ぐWholesaleのお仕事をされています。ご結婚を機にロンドンに移住。ファッション業界のサステナビリティにも興味を持ち、環境問題について日々勉強中。そんな彼女のロンドンの6年間を振り返ってもらいながら、気になる今のロンドン事情についてコラムを書いてもらいました。

ロンドンの魅力

私にとってのロンドンの魅力は【多様性】です。ロンドンでは、人口の半分ほどがイギリス国籍の方。残りの半分は、私のようにイギリス以外の国籍を持った方です。街でも自分の職場でも、毎日色んな国の方とコミュニケーションを取りますし、さまざまな価値観や文化に触れることができ、とても刺激的です。日本を離れたことで日本という国や日本人である自分を客観的に見られるようになり、視野がとても広がったように感じます。

渡英

初めてワーキングホリデーのビザで渡英してから、6年が経ちました。日本でも国内のファッションブランドで営業をしていたのですが、インターナショナルなメゾンやラグジュアリーブランドで働きたいと転職活動を始めました。その時、「英語力」の壁に当たり、英語圏かつファッションの本場であるヨーロッパ(当時はイギリスもEUの一部)の国に行きたいとイギリスを選びました。ビザの期限である2年間だけの滞在の予定でしたが、結婚をし仕事も見つかり、そのままイギリスに住んでいます。

イギリスに来てからの最初の6ヶ月は、人生で一番勉強したのではというくらい勉強をしました。語学学校で毎日6時間の授業を受けて、そのあと宿題・復習を自宅で4時間ほど。最初の3ヶ月は、毎日一生懸命に勉強をしているのに、全く上達せず、焦りを感じていました。そんな中、会話のみにフォーカスするクラスに誘われたことで、授業で習った文法や単語を実際に使う機会が増え、ようやくコツが掴めてきて、会話が少しずつ出来るようになりました。

6年経った今でも、まだまだ文法も間違えるし、日本人のアクセントが抜けませんが、昔みたいにネイティブを目指すことはなくなったので、肩の力が抜けました。英語はコミュニケーションツール。発音や文法の正確さよりも、伝えたいっていう気持ちが大切だと思います。

仕事では、同僚がよく使っているフレーズやメールの書き方など、人の良いところを真似しながらボキャブラリーを増やし、言い回しを学んでいます。ここ最近、やっと英語で書かれている本を最後まで読めるようになりました。本や新聞なども、仕事で使えるような単語やフレーズを学ぶ良い方法だと思います。

仕事をする上で大切にしているマインド・姿勢

私の仕事は、担当するブランドや商品を紹介し、バイヤーさんへと繋げる役目。ファッションウィーク期間中に展示会があるので、今は年4回ミラノに出張に行っています。展示会後はブランドと連携し、毎シーズン少しずつコレクションが良くなるように、商品構成を提案したり、話し合いを重ねています。一緒に成長している感じがあり、とてもやりがいがある仕事です。

日々のコミュニケーションで大切にしているのは、自分の考えで物事を判断せず、分からないことがあったら質問すること。インターナショナルなチームと仕事をしていると、「これは常識だから言わなくても分かるよね?」というのは通用しません。100人いたら100通りの【常識】があると思います。

世界中の国の方々とお仕事をしているので、英語ネイティブの方も、私のように第二ヶ国語として英語を使う方も沢山います。相手に誤解を与えないように、なるべく分かりやすく説明することを心掛けていますが、毎日が学びの連続です。

あとは、何事にも自分の意見を持つこと。年齢や役職に関係なく、良いアイデアは採用されることが多いので、ミーティングで自分の意見や現状を改善するための提案ができるように心掛けています。

しっかり働きしっかり休む。仕事ができる人ほど、さっさと定時で上がっていきます。自分の好きな仕事をしているけれど、パソコンを閉じたら仕事を忘れて自分の時間を過ごすようにしたいと思っています。なかなか難しいですが。笑

エリザベス女王

ニュースの一報が出た翌日は、セルフリッジなども丸一日閉店にし、葬儀の日も急遽祝日にもなりました。献花にも本当にたくさんの方々が駆けつけて、ご遺体が安置されていたウェストミンスターから遠く離れている私の家の近所までも、昼夜問わず行列ができていました。女王がどれだけ国民に愛されているのかがよくわかりました。

一方で、葬儀の費用などについては批判の声もありました。私も日々実感していますが、イギリス国内では、エネルギーの価格高騰とインフレでの物価高で生活が苦しい国民が本当にたくさんいます。平均収入、またはそれ以上の収入がある世帯でさえも、今年の冬は生活が苦しくなるとの試算も出ている状況なので、葬儀にかかった何億円というお金を国民に使ってほしかったという意見もありました。

イギリスの病院事情

自分の住んでいる地域のGPという総合科のような病院にまず登録して、不調があればまずそこに予約して診てもらいます。日本だと肌の不調で皮膚科に行ったり、足の痛みで外科に行ったり自分で症状を判断して専門医のところを予約することが多いかと思いますが、どのような症状でもまずはGPに行って、専門医を紹介してもらうという流れです。

慢性的な医療関係者の不足、また医療費が基本的に無料なので、GPの予約は2週間先ということも珍しくありません。風邪やインフルエンザ程度のことは診てもらえないことが多く、市販の薬を服用するようにアドバイスされ、自宅で症状が治まるのを待ちます。日本にいたときは、予約の日時を選べたり、当日診てもらえることが当たり前だったので、カルチャーショックでした。日本よりも市民の貧困の差が大きな国なので、医療が無料というのは、素晴らしいことだと思います。

ロンドンの食

​​多様性の街なので、さまざまな国の料理が食べられます。私が好きなのはインド、タイ、ベトナム、レバノン、エチオピア料理のレストランです。今度行ってみたいなと思っているのは、モダンアフリカ料理のレストラン!

もちろん日本よりも割高ですが、和食の飲食店もたくさんあります。お蕎麦屋さんにはまだ出会えていません。お水が硬水だから、難しいのでしょうか?日本の食や文化が好き、もしくは興味があるという人にたくさん出会いました。欧米の食と比べ、日本食はヘルシーで盛り付けなども美しいので、人気があります。

ロンドンのアートシーン

ロンドンは美術館が非常に充実していて、無料の常設展だけでもとても楽しめます。一番のお気に入りはTate Modern という現代美術館です。テムズ川沿いにあるので、お散歩がてら美術館内の本の販売コーナーでアートの書籍を見たり、Tate Editという雑貨などのセレクトショップを覗くだけということもありますが、展示も面白い内容のものが多く、いつ行っても飽きません。

今年の夏の終わりに、All Points East という毎年イーストロンドンにあるVictoria Parkで開催されるフェスに行ってきました。私が行った日は、観客の年齢層がやや高めで、パーティーをしたいというより純粋に音楽を楽しみたいというお客さんが多かったようで、リラックスして楽しめました。

私はあまり音楽に詳しくないので、音楽好きの夫や友人に薦められるがままに参加しましたが、思いがけず自分の好きなテイストのアーティストに出会えたり、いつも新しい発見があるのがフェスの醍醐味でしょうか?夫の影響でテクノやエレクトロ、アンビエントといったカテゴリーの音楽を聴くようになりました。父がクラシック好きな影響もあり、ジャンルを問わず気になるアーティストのコンサートにはなるべく行くようにしています。

ロンドンファッションと環境問題

周りからどうみられるかとか、トレンドにあんまり関係なく皆が好きなものを着ている印象です。Vestiaire CollectiveやEbayなどでデザイナーズブランドの古着を買ったり、ヴィンテージマーケットで安く手に入れた古着を取り入れたり、上手に自分を表現している人が多いかと思います。

サステナビリティーへの関心も高まっているので、環境に配慮したモノづくりを行うブランドが新たにでてきています。既存のブランドでもそういうことを意識してモノづくりに取り組んでいるところもあります。ただ、ファッション業界の構造自体があまりサステナブルとは言い難いので、課題もたくさんあります。環境問題について数年前からとても興味があり、ファッション業界でのサステナビリティについてはオンラインコースで勉強中です。

環境問題もそうですが、政治、人種差別などのいわゆる日本では“難しい or 意識高い系”といわれてしまうようなトピックについて、職場でも友人とも話す機会がたくさんあります。私自身、日本にいたときはそういうことにあまり興味や関心もなく生きてきました。今は自分が外国人になったことで、ビザが必要だったり、差別を経験してきたからこそ、そういう問題が人ごとでなく身近に感じられるようになって興味津々です。

環境問題については、ヴィーガンやベジタリアンの食生活を実践している友人がきっかけで興味を持ちました。動物愛護の観点だけでなく、健康面や、環境問題に配慮している方も多くいます。世界の畜産業が排出するCO2の量は飛行機や車などから出るものを上回るといわれています。

マイバッグで持ち帰った食材。「なるべくイギリス産のものを購入するように心掛けています。」

ロンドンでは、ベジタリアンかヴィーガンに特化されたレストランだけでなく、どのレストランに行っても、大体ベジタリアンかヴィーガンに対応したメニューが用意されていています。自分の食のチョイスが、実は環境に影響するということ。普段何気なく食べているものが、どこでどうやって作られているかということを知ってからは、お野菜中心でなるべくお肉を食べない生活を続けています。

プラスチックゴミの問題も数年前にロンドンでも話題になりました。ある地区のリサイクルゴミが国内で処理されずに海外に送られていたということが報道されて、自国のゴミを他国に押し付けるのはおかしいと問題になりました。世界のプラスチックゴミって、実は9%ほどしか実際にリサイクルされていないようです。ロンドンではスーパーやショップでのビニール袋の有料化、紙製の容器や袋などの取り組みが進んでいます。最近では、フードロスの問題を改善するために、賞味期限の表示が廃止された食べ物もあります。

私が子供の頃は、紙の使用量増加のせいで木が伐採されている為に、プラスチックを推奨するような時代でした。なので、紙だからいいというのはちょっと違って、素材に関わらず使い捨て容器をやめようという方向に政策を進めてほしいなと思います。そういう面ではイギリスもまだまだです。ただ、最近はマイボトルやコーヒーカップを持ち歩く人も見かけるようになりました。私もちょっとずつ意識するようになってからは、ペットボトルの飲み物を買うことがほとんどなくなりました。

最後になりますが、環境問題も個人で取り組めることには限界があります。もちろん一人一人が考えて行動するのはとてもいいことですが、ものすごいスピードで進んでいく温暖化、環境危機に対応するためにはやはり大手企業や政府の思い切った政策が不可欠です。そして温暖化が進んで実際に被害を受ける人たちって社会的弱者とか有色人種といわれています。そうやって考えると、環境問題、政治、人種差別とかって全部繋がっていて全部自分に跳ね返ってくることなんだなあって思います。だからこそ、こういう話題が普通にできるようになるといいですよね。

Column & Photo : Minami Soma
Edit & Artwork : Sonoka Takahashi

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