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Dans la Poche・内藤裕子さん。お店の名前は、フランス語で【ポケットの中】という意味。安心・安全でおいしいカヌレが、「いつも身近にあったらいいな」という思いで名付けたそう。
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内藤さんは大のワイン好き。Dans la Pocheを始めたきっかけもカヌレとの出会いも、ワインで繋がっている。お店のコンセプトは、ワインに合うカヌレ。Dans la Pocheのスパイスが入ったカヌレは、ワインを愛する内藤さんならではの独自の発想からレシピが生まれた。
「大学で外国語学部・フランス科にいたこともあり、20歳を迎えてからワインを飲むようになるのは普通の流れでした。
東京に引越した2011年頃から自然派ワインに傾倒し、ナチュラルワインを楽しめるレストラン、ビストロ、バーにばかり通っていました。食後のデザートを欠かせないスイーツ好きなのですが、ワインと楽しめるスイーツはなんだろう、と辿り着いたのがカヌレです。
私はアレルギーがあったので、食生活でもオーガニックや添加物などに気を遣っていました。オーガニックであり、自分なりの基準をクリアしたカヌレ作りをしているお店を探したのですが、見つからず。自分で作るようになりました。それが友達から評判で、お店を始めることになります。」
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そうした自身のアレルギーの経験から、カヌレの原材料は、無農薬の有機小麦粉、放し飼い鶏の有精卵、甜菜糖、低温殺菌牛乳など、オーガニックや身体に優しい材料にこだわっている。そして、それは身体だけでなく、生産者さんへの継続的なサポートにも繋がっていく。
「子供の頃からアトピー体質で、中学では花粉症デビューをし、春だけでなく冬以外はほぼ何かしらの花粉に悩まされています。いわゆる【丁寧な暮らし】ブームが来た時に、オーガニックやエコという言葉が出てきて、オーガニックの野菜や食材が手に取りやすくなった時、アレルギーを抑えるためにオーガニックのものを選ぶようになりました。オーガニックのものを育てるのも、添加物なく食品を作るのも、生産者さんたちの数え切れない手間や苦労の末に出来上がっている。それに感謝して、そういった物を選んでお金を使う、投資をするという形で、彼らの活動、生活をサポートしたいとも思いました。サスティナブルでなければ意味がないと思ったからです。」
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さらに、カヌレは卵黄を多く使用するため、卵白が余ってしまう。Dans la Pocheでは、使用しない卵白は、内藤さんのご友人のお店でマカロンになっているようで、無駄にしない、そして作る人も食べる人も幸せになる、という完璧な循環が生まれている。
「フランスでは、カヌレ専門店はほとんどないので、残った卵白は他のお菓子やパンなどで使用され、日本では、殻が混入するリスクも少ない卵液を仕入れをしているお店が多くあるのかと思います。自分のお店を始めて数ヶ月後に友達が独立し、ワインバーをオープンしたので、マカロンに卵白使ってもらえないか、本当にタイミングよく相談できて良かったです。」
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Dans la Pocheがお店を構える祐天寺。中央中通りは、昔からそこに住む方の多い、とても温かい街・商店街だという。
「中央中通りはもともと目黒区役所があったことで賑わっていたそうですが、役所がなくなり、昔からその土地に根付いた方や、まわりに介護施設が多いこともあって、介護グッズを販売する店も増えていました。
ただ、私がお店を出した後に、同じテナントにおはぎや『タケノとおはぎ』さん、道路向かいにイチゴ大福や『いちご大福と茶菓の店・あか』さんが続けてオープン。今はヨーロッパから買い付けされているセレクトヴィンテージショップ『TEMPORARY』さんなどができて、賑やかになってきたと思います。
ご近所の方は顔見知りで、すれ違うと挨拶をしてくれたり、声をかけてくれたり、とても温かな雰囲気です。私は独身一人暮らしなのですが、おそらく私の姿を数日見掛けないと誰かが気づいてくれそう、と安心しております。」
Dans la Pocheといえばのフランスの伝統的な三角包み。この店の代名詞となっている。
「フランスのパティスリーでの伝統的な包み方です。でも、最近はフランスでも、日本のようにケーキを買ったら箱に入れるようになってきていて、どんどん見なくなってきてしまいました。もしかすると、パリの若者はこの包みを知らない人もいるかもしれません。私がフランスに初めて行った1997年は、どのケーキ屋さんもこの包みをしてくれていて、初めて見た時は可愛らしく、エコな包装に感動したのを覚えています。いつか日本のダンラポッシュで見たこの包みが、パリに逆輸入されてまたブームになったらいいなと夢見ています。」
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今年の6月に訪れたサンセール。4年ぶりの渡仏。この旅では、大好きなワインの造り手・セバスチャンリフォーの元で、ファームステイに参加。2週間の畑仕事の中、アレルギー持ちの内藤さんは、花粉症を悪化させながらも(!)自然との共存と厳しさを通じて、生産者の信念にとても感動したそう。
「自然相手に仕事をしたのは初めてだったのですが、非常に柔軟に、それでも強い志を持って仕事をされているなと思いました。そして近所の方々とのつながりの大切さを感じました。自然相手に一人孤独に仕事をすることはできなくて、人々は繋がりを持って時に助け合いアドバイスをしあい、生活をしていました。」
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『より現地の人とより触れ合え、一人でやり遂げた達成感も得られるひとり旅。二人以上で行く旅は、旅先よりもその人との思い出の方がメインになります。』という旅行好きの内藤さん。初めての海外旅行はというと、19歳の時に行ったトルコの女子旅。
「いわゆるカルチャーショックを受けるには十分な旅で、女友達3人と喧嘩をしながら、楽しみながらトルコ、ギリシャ、エジプトを1ヶ月かけて周りました。いつかまた一緒に行きたいねと言っていた友人が亡くなってしまったこともあり、大人になった自分の目で改めて尋ねてみたい国です。」
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バックパックでのフランス周遊旅、語学留学を経験して感じた不安と緊張。そして、その後の達成感。
「若い頃はバックパックを背負って、宿の予約も何も決めずに周遊していました。もともと私の性格は心配性だし、計画的に物事を進めていくタイプ。ただ、人生は何が起こるかわからない、旅は人生の縮図だと思って周遊していたので、旅を通して自分の性格や考え方を打ち壊したいとも思っていました。
翌日の宿探しが不安で眠れない日もありました。でも、実際何とかなるもので、問題に直面した時の自分は、考えて、行動して、解決することができる。そう言った日々を繰り返し経験し、人生に活かせるようにしたいと思っていました。今でも翌日が不安な日はありますが、その時は、宿探しが不安で寝れなかったフランスでの夜を思い出します。そして、成るように成る、何とかなると自分に言い聞かせています。」
フランスのほとんどの地方都市を訪れている内藤さんは、フランスは地方・田舎町が特におすすめだそうで、
「留学していたブルターニュ地方の小さな村は、可愛らしくて人々も温かくて大好きです。留学前にフランスを周遊していたのですが、一番気に入ったブルターニュに留学を決めました。
フランスはほとんどの地域を訪れることができているのですが、実は免許がないこともあって、まだ唯一行けていないのが、サヴォワ地方、ジュラ地方です。いつか尋ねてみたいです。
フランスに行ってきたという日本の方に話を聞くと、【フランス=パリ】という方がほとんどなのが寂しいです。パリは大都市なので、フランスの地方とは全く別物です。フランスを知るのは、地方を知ることだと思います。1日でもいいから地方都市に足を伸ばして、パリではないフランスを感じて欲しいです。」
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様々な人種の方が多くいるフランス。フランス各地で感じたフランスの人々の好きなところ、そして今だからこそ、クスっと出来る留学中のトラブルエピソードも。
「多様な人がいるので他人に干渉しないことです。外見はもちろん考え方、宗教、すべて相手を尊重して、相手の考えをちゃんと聞いてくれます。それでも他人に冷たいということはありません。困っていたらすぐに助けてくれる、手を差し伸べてくれる、声をかけてくれる人間らしさがあります。昔の日本の下町のようです。」
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「フランス留学中は、本当にたくさんトラブルがありました。なぜか家にまつわるトラブルに祟られていて、或る日突然、天井が抜けて石の塊が落下してきたこと。また或る日は、突然下の階の住人が怒鳴り込んできて、私の部屋のトイレから流したものが、下の階のバスタブに溢れ出ていると言われたり。事実、溢れていたので大家さんに掃除しに行ってもらいました。
またまた或る日、住んでいたアパート(極右翼系の落書きが多かった)で、明らかにフランス人じゃない私の名前ラベルが貼られた郵便受けから名前ラベルを盗まれることが続きました。郵便ポストに名前ラベルがないと、重要な書類などが届かずに困っていたのですが、何度か盗まれた後、自分のラベルの裏に『あんた、これコレクションしてるの笑?』とフランス語でユーモアを込めて書いたら、そのラベルが盗まれた後にピタリと止まったんです。これは勝ったなと思いました。
これから海外に出る方は、理不尽だなと思ったことがあったら、絶対に口に出して主張する。自分の考えを口に出さないとフランス人は汲み取ってはくれません。むしろ日本人は黙って我慢するからと思っている人もいると思います。なのでどこに行っても自己主張して楽しい旅にして欲しいです。」
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移動が制限された時期を乗り越え、これからは自分の意志でいつでもどこへだって行ける。出会いや経験、思い出が深く刻み込まれる旅。
「狭い日常という空間だけに閉じ込められているとどうしても閉鎖的な考えやに執着してしまうことが増えると思います。そんな時は、広い世界に目を向け、そこで感じたことは日常に還元することができる。
日本で平凡な毎日を送っているとふとした瞬間に、旅の途中の感覚にタイムスリップすることがあります。気候であったり、気温や天気が似ている時、同じ花を道端で見かけた時。
普通の日常がふと異空間に塗り変わると、ああ平凡な1日じゃないんだな、今日も何が起こるかな、といった人生が旅であり、今日は旅の中のどんな1日だろう、と想像するだけでワクワクします。好きな脚本家・木皿泉さんのドラマ『すいか』のラストでの一言で、とても大切にしているフレーズがあるんです。」
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『似たような一日だけど、全然違う一日だよ。』
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2024年1月6日で6周年を迎えるDans la Poche。
6周年記念に限定カヌレ缶を販売予定。6周年限定缶には、内藤さんが旅をしたフランスで味わった各地の伝統菓子をカヌレに落とし込み、全てワインに合うようにアレンジされているとか。
12月末にDans la Pocheオンラインショップにて販売スタートし、購入者順に発送。発送完了は2月末。詳細は、Dans la Pocheインスタグラムでご確認ください。